作成日: 2026年3月21日
1. はじめに
2024~2026年にかけて、ベトナムは投資法、企業法、法人所得税法(CIT)、個人所得税法(PIT)、付加価値税法(VAT)、土地法、消防法、個人データ保護法、知的財産法など、ビジネスに関わるほぼすべての主要法令を改正する歴史的な立法ラッシュの最中にある。加えて、2025年3月 の省庁再編により行政窓口も大幅に変更された。
本レポートは、2026年 にベトナムに進出する外資系製造業を想定し、すべての主要法令改正を網羅的に整理したチェックリストである。
2. 法令改正タイムライン
2.1 既に施行済み(2026年3月現在)

2.2 2026年中に施行予定
3. 各法令改正の概要と対応事項
3.1 投資法改正(2026年3月1日施行)
- 38 の条件付き事業ラインのライセンス要件撤廃
- 原則承認が必要なプロジェクトの範囲縮小
- 一部の外国投資家はIRC取得前に企業設立が可能に
- 事前承認型から事後監査型への転換
対応: 新投資法に基づくIRC申請手続きを弁護士と確認。窓口は旧MPI(計画投資省)から新MOF(財政省)傘下に変更済み。
3.2 企業法改正(2025年7月1日施行済み)
- 最終受益者(UBO: Ultimate Beneficial Owner)の開示義務を新設
- 直接・間接に 25% 以上の持分を保有する個人がUBO
- 2025年7月1日 以降設立の企業は設立登録時にUBO情報開示必須
- 非公開社債の負債資本比率上限 5:1
対応: 日本の親会社の株主構造に基づきUBO開示書類を準備。
3.3 CIT法改正(2025年10月1日施行済み)
- 標準CIT税率: 20%(変更なし)
- SME軽減税率: 前年度売上 30億VND 以下 → 15%、30億超~500億VND → 17%
- 工業団地(Khu cong nghiep)がCIT優遇立地から除外(地理的優遇立地に所在する場合を除く)
- ハイテク・グリーン経済の新優遇: 10% 税率 15年、4年 免税
- R&Dスーパーデダクション: 実際の費用の最大 200% まで控除
対応: 進出先の工業団地が地理的優遇立地に該当するか確認。CIT優遇の適用条件を税務コンサルタントと協議。
3.4 VAT法改正 + 2%減税(2025年7月1日施行済み)
- 仕入VAT控除のための非現金決済閾値: 2,000万VND → 500万VND に引き下げ
- 電子インボイス(hoa don dien tu)完全義務化
- VAT 2% 減税(10% → 8%)は 2026年12月31日 まで延長
- 除外業種: 電気通信、金融・銀行・証券・保険、不動産、金属・金属製品、鉱業製品
対応: すべてのサプライヤーへの支払いを銀行振込に統一。電子インボイスプロバイダーを設立登録と同時に契約。製品のVAT率(8% vs 10%)を事前確認。
3.5 PIT法改正(2026年1月1日から給与所得に適用)
- 累進税率: 7 段階 → 5 段階に簡素化
- 最高税率 35% の適用: 月額 8,000万VND → 1億VND に引き上げ
- 基礎控除: 1,100万VND → 1,550万VND/月
- 扶養者控除: 440万VND → 620万VND/月・人
- 日本支給分を含む全世界所得の申告義務は継続
対応: 駐在員の給与パッケージを新PIT法に基づき最適化設計。日本支給分を含む申告体制を構築。
3.6 会計通達 Circular 99/2025(2026年1月1日施行済み)
- Circular 200/2014 を全面的に置き換え
- 勘定科目体系(COA)の刷新、企業独自のCOA設計が可能に
- 新勘定科目: 8213 -- グローバルミニマム税費用 等
- IFRSとの整合性向上
対応: Circular 99 に基づく勘定科目体系を設計。会計ソフトウェアの対応状況を確認。
3.7 土地法2024(2025年1月1日施行済み)
- 外資企業が工業団地内で土地使用権の「譲渡」を受けることが可能に
- 外国投資家の土地使用権最長期間: 50年(延長可)
- 年間賃料から一括賃料への切替が可能
対応: 一括賃料 vs 年間賃料のメリットを比較検討。窓口は農業環境省(旧MONRE)に変更。
3.8 消防法(2025年7月1日施行済み)
- 消防設計審査の要件強化
- 行政罰則の大幅引き上げ
- 消防検査合格なしでの工場稼働は不可
対応: 工場設計段階から消防設計審査を実施。建設業者に新消防法対応を確認。
3.9 個人データ保護法(2026年1月1日施行済み)
- 法律レベルに格上げ(旧: 議定 13/2023)
- すべての個人データ処理に法的根拠が必要
- 越境データ移転規制
対応: 従業員データの管理規定を策定。日本本社へのデータ送信は越境移転規制の対象。
3.10 知的財産法改正(2026年4月1日施行予定)
- 商標実体審査: 9 ヵ月 → 5 ヵ月に短縮
- 早期審査制度の導入(特許・商標)
- 模倣品の「保管」も侵害行為に追加
対応: ブランド・商標のベトナム登録を検討(審査期間短縮で有利)。
3.11 省庁再編(2025年3月1日施行済み)
対応: すべての申請について新窓口を確認。弁護士/コンサルタントに最新手続きを照会。
3.12 外国人労働者管理議定 219号(2025年8月施行済み)
- 求人公告期間: 15 暦日 → 5 営業日に短縮
- 労働許可証と犯罪経歴証明書の同時申請が可能
- 電子的結果発行
対応: 駐在員の労働許可証取得は新手続きが適用される。所要期間が短縮されていることを見込んでスケジュール策定。
4. マスターアクションタイムライン(2026年)
Phase 1: 準備(3~4月)
- 設立代行弁護士/コンサルタントの確定
- 工業団地との賃貸借条件交渉
- UBO開示書類の準備
- CIT優遇の適用可否を税務コンサルタントと協議
- 駐在員給与パッケージの設計(PIT最適化)
- 会計システムの選定(Circular 99 対応)
- 電子インボイスプロバイダーの選定
Phase 2: 設立登録(5月)
- IRC申請(新投資法に基づく)
- ERC申請(UBO情報開示を含む)
- 税務登録
- 銀行口座開設、非現金決済体制構築
- 電子インボイス登録
- 駐在員の労働許可証申請
- 土地使用権契約の締結
- 個人データ保護に関する社内規定策定
Phase 3: 建設(6~9月)
- 消防設計審査の申請・取得
- 環境影響評価(EIA)の申請
- 建設関連支出のすべてを銀行振込で実行(VAT非現金決済要件)
- Circular 99 に基づく勘定科目体系の確定
- 従業員採用開始(PDPL対応の労働契約)
- 商標登録出願(任意)
Phase 4: 稼働開始(10~12月)
- 消防検査の受検・合格証取得
- 売上VAT率の確認(8% vs 10%)
- PIT暫定申告の開始(駐在員の日本支給分含む)
- 初回VAT申告
- 2027年1月 のVAT 10% 復帰に備えた価格改定検討
- 年末PIT確定申告の準備
5. リスクサマリー
最高リスク

高リスク
6. 参考法令一覧
本レポートは公開情報に基づく調査結果であり、法的助言を構成するものではありません。個別の法的判断については、現地の法律事務所・税務コンサルタントにご確認ください。





