さわるベトナム

プロフィール

加藤寛明

ハノイ在住10年目、海外生活は14年。

会計?バカにしてた

会計の知識がゼロだった。正直、経理とかバカにしていた。若い頃に会計士を目指すような人に会うと、「若いのに何安定を求めているの?」というように感じていた。チャレンジが全てだと思っていた。前へ!Move Forward!という感じで。

その延長線上で、20代でNPO起業した。「社会を変えるぞ」と意気込んで事業プランを書いた。でも、そのプランには数字の裏付けがまるでなかった。収支計画は願望の羅列。若い故による夢見がちな事業プランであっただけでなく、会計の知識がまったくなかったのも原因だと思う。

当然、活動は行き詰まった。お金の流れが見えないまま走り続けて、気づいたときにはどうにもならなくなっていた。

NPOは休止。残ったのは、会計用語を聞くだけで胃が重くなるトラウマだけだった。その後、キャリアを変えようと就職活動したり勉強したりしても、避けてきて失敗した会計用語を聞いても理解できない。そして絶望的だったあの頃の苦い記憶がフラッシュバックして逃げたくなる。そのまま何年も過ぎた。

会計から逃げても、会計の方から追いかけてくる

それでも人生は続く。会計から逃げても、会計の方から追いかけてくる。

その後ベトナムに渡った。現地採用で某インターナショナルな企業に営業で入社したのだが、そのときの外国人の責任者がコロナで帰ってこれず私が後を継ぐことになった。会計全くわからない。原価管理、予算編成、経営報告。逃げたい。と思った。

しかも東南アジア管轄の上司はすごい人ばかり。最初はオーストラリア人。某大企業の社長と仕事していたときはプライベートジェットで移動していたそうだ。その次は中国人だが英語がネイティブレベル。しかも若くして責任のある立場になるので、30代前半ながらもビジネスの修羅場をくぐっている。

そんな環境でオレ?無理だと思った。理解できないだけでなく、トラウマで会計用語を見ると避けたくなる。もう心の病みたいな感じ。でも給料は倍くらいになるので、家族のために乗り越えなければならないと思った。

簿記、経理マネージャー、MQ会計

最初にやったことは簿記の勉強をすること。今まで何度もテキストを買っては挫折してきた。会計用語を見ただけで過去の失敗だけでなく、人が離れていったことや、家族との確執や恥ずかしいことなど、いろいろな記憶が浮かんでくるので、想像を絶する難しさだった。

なんとか簿記3級レベルを理解できるようになり、2級も途中まで理解できるようになった。ただし、テストを受けたら3級も2級もどちらも受からないレベル。

そんな中で、会社のベトナム人経理マネージャーがいろいろと教えてくれた。理解できない私にあきれられたり、怒ったりしながらも辛抱強く教えてくれた。毎月の本社へのレポート作成時は毎月同じことを聞いていた。月次決算の読み方、原価の構造、予算と実績の突き合わせ方。「ここの数字はこう見るんですよ」と何度も何度も説明してくれた。専門家の隣で実務を叩き込まれる経験が、教科書では絶対に得られない理解を与えてくれた。仕事でやっていたのだろうけど、私にとっては人生の恩人です。

立場的に一番必要な管理会計の本は何冊も買って読んでみたが、全然理解できないというか、あの頃のトラウマが戻ってくるような感じで進まない。

その後はMQ会計などの、管理会計をかなりシンプルにしたものの本をほぼ全部読むようになり、この切り口からは理解できるようになった。原価計算や減価償却とか簿記でもよく理解できなかったが、MQ会計のおかげでよく理解できるようになった。

その後、勤務先の会社が日本人を減らす方針となり退職。そこが現地採用の大変さ。帰るところがない。会社の方針が変われば身分はない。どの会社でも日本採用の人たちは身分が保証されているが、海外子会社の現地採用は浪人と同じ。日本人が求められるポジションは営業がほとんどなので、転職できても給料が下がることを覚悟していたが、ほぼ同じ条件で新しい仕事が見つかった。

会計に救われた。

AIは遊びから始まった

2022年だったと思うが、ChatGPTが話題になったあたりから触り始めた。

当時はChatGPTに課金して、その後Geminiの課金もはじめ、今はClaudeのMaxプランにも入っている。月のAI支出は140ドル。最初は雑談や翻訳、ちょっとした調べ物に使っていただけだった。

衝撃は、実務で使い始めてからじわじわ来た。

リスクの高い中国企業との取引で、信用情報を集める必要があった。試しにGeminiに聞いてみたら、ほぼ正確な情報が出てきた。中国企業が中国の法律に基づいて中国語で書いた契約書を、ベトナムの法律の観点からレビューしてもらったら、後から弁護士に確認した意見とほぼ同じだった。新規ファイナンシャルリースの支払いプランを生成させたら、リース会社から届いた見積もりとほぼ一致していた。

1回ごとの驚きは小さい。でも、それが積み重なると、「これはもう使わない理由がない」という確信に変わった。

AIは万能じゃない。でも、ちゃんと使えば「知識のない分野でも、ある程度のところまで自力でたどり着ける」ツールだとわかった。会計がトラウマだった自分にとって、それは大きな意味を持つ武器だった。

テキストをやめて、手を動かして勉強する

そして今、CMA(米国公認管理会計士)に挑戦している。

きっかけは単純だった。簿記やMQ会計は学んだものの、マネジャーに必要な管理会計を体系的に習得したい。

「ちゃんとした体系が欲しい。」

そう思ったときに見つけたのがCMAだった。管理会計の国際資格で、カリキュラムが綺麗に整理されている。予算、原価管理、業績管理、財務分析、投資意思決定。自分が実務で必要としているスキルが、そのまま試験範囲になっている。

最初は英語のCMAコースに課金した。当時は英語でしか試験を受けられなかった。でも教科書もビデオも簡単なことを難しく説明しているようで、なかなか進まなかった。

進まない理由のひとつは、手を動かさないから。表を見て、問題に答える。会計は絶望的に苦手だったが、Excelはそこまで苦手意識がない。最初はとっつきにくい表でも数式を見ながらだとつながりがわかる。

AIが「CMA程度の試験なら私は全部把握しているのでテキストつくれますよ」とAIが言うので、テキストをきっぱりとやめ、AIに自分用の教材を作ってもらうことにした。教材を作ること自体が最高の勉強法で、作った教材がそのまま実務で使えるツールになる。勉強と仕事と教材制作が、全部つながっている。そうしてできたものを置いているのが、このサイトだ。

このサイトを作った理由

もともとは、CMAのコースに登録せず、AIだけで合格を目指してみようと思ったことが始まりだった。AIが教材を作れると言うので、それなら自分に都合の良い教材を作ればいい、と考えた。

テキストと問題集ではわからない。でも、いつも使っているExcelに数式を入力したり、入っている数式を読んだりするとわかる。だからExcelの教材を作り始めた。

ところが、CMAの教材が終わらないうちに、これをベトナム会計でやったらどうかと思いついた。さらに、私が最初の段階からとっつけなくて苦しんだ簿記も、Excelになったら人の役に立つのではないかと思った。Claude Codeで作り始めたら、CMAの勉強そっちのけで教材づくりに夢中になった。ベトナムのビジネスの仕組みを扱ったスクールも、もとはClaude Codeの練習として作ったものだ。

スクールを作ったのは、練習ネタが必要だったからだけではない。ERC(企業登録証明書)、IRC(投資登録証明書)、CIT(法人税)、FCT(外国契約者税)。長く住んで仕事をしてきたので、経験で「なんとなくわかった気」にはなっていた。でも、体系として学んだことは一度もなかった。「投資法の改正でERC先行取得が可能になった」「CIT法の改正で工業団地優遇が廃止された」と言われても、それがどういう仕組みの中の話なのか、順を追って説明することができない。

体系的に解説しているのはJETROのウェブサイトだと思うが、言葉が難しくて実務で何をすればいいかがピンとこない。コンサルは「わかっている前提」で話をする。私もバカだと思われるのが怖くて、わかったフリをして話を進めてしまう。コンサルのウェブサイトも「法令アップデート」系の記事が多く、基礎がわかっていないとなぜ大切なのかもわからない。「CIT優遇が廃止」と言われても、そもそも優遇の仕組みを知らなければ「で?」となる。

そこでAIに「ベトナムでビジネスを行う上で知っておくべき法令分野を、コースみたいに整理してほしい」と頼んでみた。返ってきたのが45分野のリストだった。会社設立、税務、労務、外為、コンプライアンス、そして直近の法令改正。ビジネスや法令の話なので、ひとつのAIの回答を鵜呑みにするわけにはいかない。45分野それぞれについて、Claude、ChatGPT、GeminiにDeep Researchをかけ、回答を突き合わせた。3つが一致する情報はそのまま採用し、数値や法令番号が食い違う場合は末尾の要確認リストに残す。読む人が後で自分で調べ直せるように、法令番号とURLは必ず残す。

作業を進めるうちに気づいた。ベトナムでビジネスをしている日本人は、たぶんみんな同じ状況だ。長年住んでいる自分でもこれなのだから、来たばかりの人はもっとわかりにくいはずだ。日本と同じだと思っていると危ない。だったら、自分のために作った45分野の解説を、誰でも読める形で置いておけばいい。そう思って形にしたのがスクールだ。

AIが書いたものは、人間が検証して初めて完成する。

作った教材をnoteで共有しようと思っても、大量にあるのでアップする時間がない。それならまとめてウェブサイトという形で置いてしまおう、というのがこのサイトのはじまりだった。ただ、Excelファイルのままだと開くのが面倒だし、テキストと行ったり来たりしなければならない。Claude Codeに「Excelっぽい操作性で作れるか」と聞いたら、作れるとのことだった。

もうひとつ、Claudeを経理に導入しているが難しく考え過ぎている元同僚の助けになろうと思って、ベトナム経理のためのClaudeの教科書を作った。

まずはこのウェブサイトを使って自分がCMAに合格してみて、他の人にも勧められるようにしたい。

これからこのサイトでやること

CMA試験に向けて勉強しながら、その過程をリアルに共有します。わからなかったこと、つまずいたこと、AIに助けられたこと。失敗も含めて、そのまま書いていきます。

具体的には、こんな内容を置いていく予定です。

  • 管理会計の基礎を、手を動かして体感する学習シリーズ
  • ベトナム会計と簿記を、同じやり方で学べる教材
  • ベトナムのビジネスの仕組み
  • ベトナム経理のためのClaudeの教科書
  • CMA受験のリアルな進捗と勉強法
  • AIを使った学習・仕事術

扱っているのは、ベトナムの会社の仕組み、会計、AIを仕事にどう組み込むか、そしてベトナムの市場です。ばらばらに見えますが、ベトナムで仕事をしていると、この4つは同じ現場でつながっています。

会計がわからなくて困っている人、AIを活用して学びたい人、CMAに興味がある人。どれかひとつでも当てはまったら、一緒に走ってもらえたら嬉しいです。

お断り

会計の専門家ではありません。簿記も管理会計も学び直している途中です。法令に関わる記述には「いつ時点のものか」を書いていますが、法令は変わります。実務の判断は、そのときの一次資料と、必要なら専門家に確認してください。間違いを見つけたら直します。

教材に出てくる会社・人物・金額は、断りがない限りすべて架空です。

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