作成日: 2026年3月21日


1. はじめに

ベトナムの土地法 2024(Luat Dat dai 2024、法律 31/2024/QH15)は、2013年 土地法を全面的に改正するもので、11年 ぶりの大改正となった。一部条項は 2024年8月1日 に前倒し施行され、2025年1月1日 に全面施行された。

本稿では、ベトナムで工場建設を計画する日系企業が知っておくべき、工場用地リースに関する新ルールを解説する。


2. 最大の変更点:市場価格評価の義務化

2.1 従来の制度

従来、土地価格は政府が 5年 ごとに策定する「土地価格枠組み」(Khung gia dat)に基づいて決定されていた。この固定価格枠組みは実際の市場価格を大幅に下回ることが多かった。

2.2 新制度

改正法では固定価格枠組みが 廃止 され、市場価格に連動する新制度が導入された。 表:工場用地リースの戦略

2.3 4つの評価手法(政令71/2024)

政令 71/2024/ND-CP が規定する評価手法は以下のとおり。 表:契約前の確認事項

3. 工業団地内の土地リース

3.1 リース方式

外資企業がベトナムで工場用地を確保する主な方法は、工業団地(Khu cong nghiep)のデベロッパーからサブリース(転貸)を受けることである。工業団地では、法的・行政的な整備がデベロッパーによって完了しているため、手続きが比較的スムーズである。

3.2 リース料の支払方法

土地法2024では、支払方法の選択肢が以下のとおり規定されている。

一括払いが認められるケース:

  • 工業団地(Khu cong nghiep)
  • 工業クラスター(Cum cong nghiep)
  • ハイテクパーク(Khu cong nghe cao)
  • 輸出加工区(Khu che xuat)

年払い: 外資企業を含む経済組織が年払いを選択可能(第 30.2条)。 表:リスク要因と対応策

3.3 借地料の算定(政令103/2024)

政令 103/2024/ND-CP が借地料の算定方法を規定している。

  • 一括払い: 個別評価に基づく特定の土地価格を適用
  • 年払い: 土地価格表に調整係数を乗じた価格を適用

4. 土地価格の上昇見通し

4.1 地域別の現状(2025年初時点)

表:まとめ

4.2 今後3年間の見通し

全国的に年間 3~9% の上昇が予測されている。

  • 北部: 5~9% の上昇見込み
  • 南部: 3~7% の上昇見込み

市場価格連動の新制度導入により、従来よりも価格上昇が顕在化する可能性がある。


5. 外資企業の土地使用権の拡充

5.1 新たに認められた権利

土地法2024では、外資企業の権利が以下のとおり拡充された。 表:table1 これにより、工場用地の確保手段が広がった。デベロッパーからの新規リースに加え、既存企業からの土地使用権譲受も選択肢となる。


6. 土地使用権証明書(LURC)

6.1 LURCの重要性

土地使用権証明書(Giay chung nhan quyen su dung dat, LURC)は、土地使用権の公的証明書類であり、銀行融資の担保設定にも必要となる。改正法ではLURCの発行手続きが簡素化された。

6.2 デジタル地籍図との連動

デジタル地籍図と土地価格データベースが整備されている地域では、筆ごとの価格リストが作成される。2026年1月1日 からの適用を目指して整備が進められている。


7. 経過措置

7.1 既存契約への影響

土地法2024第 257条 は、新法施行前に土地配分・リース決定が行われたケースについて経過措置を規定している。既に工業団地にてリース契約を締結済みの企業は、契約条件に基づく権利が原則として維持される。

7.2 工業団地デベロッパーの義務

借地料の減額決定があった場合、デベロッパーは発効日から 30日 以内に、減額分をサブリース先に按分配分する義務がある(第 202条第6項)。


8. 日系企業への実務的提言

8.1 工場用地リースの戦略

表:table2

8.2 契約前の確認事項

表:table7

8.3 リスク要因と対応策

表:table8

9. まとめ

表:table9 土地法2024は、ベトナムの土地制度を市場原理に近づける重要な改正である。工場建設を計画する日系企業は、リース料の上昇傾向を踏まえた早期交渉と、一括払い・年払いの費用比較に基づく最適な支払方法の選択が求められる。


本レポートは2026年3月21日時点の情報に基づく。土地法の施行細則や通達の追加発出により、運用の詳細が変更される可能性がある。工場用地リースの具体的な進め方については、現地の不動産アドバイザーおよび法務アドバイザーとの協議を推奨する。