「AIはこう使え」「こうしないと乗り遅れる」。
そういう情報商材やコンサルの言葉を、最近よく見かけます。手順があって、テンプレートがあって、有料講座がある。なるほど、と思いながら、いつも同じところで引っかかる。順番が逆じゃないか、と。
私の感覚では、チャットAI含めてCoworkやClaude Code、Codexのようなやつ——は、ドラえもんに近い。
のび太は、ひみつ道具の作り方を勉強してから泣きついたでしょうか。しないですよね。「ドラえも〜ん」と泣きついて、「こういうことがやりたい」と言う。すると道具が出てくる。ときには、こうしたらどうだと提案までしてくれる。
入口は、それでいいんです。今日はその話を、自分の体験として書きます。AIの使い方講座ではありません。ベトナム語が一文字も読めない人間が、AIに泣きついて何ができたか、という記録です。
のびたは少年の頃はドラえもんに泣きついた。でも、大人になってからドラえもんをのびたが開発したという映画もある。我々も同じ。最初からドラえもんを作れなくてよい。最初からフォルダ構成をきちっとしたりMDファイルを作れなくてよい。最初は泣きついて良い。使いながら覚えていけば。
ベトナム語が一文字も読めないまま、泣きついた
私はベトナムで働いていて、ベトナムの会計を学びたいと思いました。現地の会計スクールが売っている教材一式を買った。PDFのテキストが8冊、Excelの演習問題、解説動画が大量に。
当然、中身は全部ベトナム語です。以前ならベトナム会計を勉強するなんて叶わぬ夢です。なぜなら私はベトナム語が読めない。
私は教材のフォルダごとAIに渡して、こう泣きついた。「これ、ベトナム会計の教材。私はベトナム語が分からない。逐語訳じゃなくて、日本人向けの教材に作り直して。Excelの演習はそのまま日本語にして」。
命令ではなく、相談でした。それだけで、道具が出てきました。
最初は、ファイルの場所すらつまずいた
正直に書いておくと、最初から魔法のように進んだわけではありません。
最初につまずいたのは、たいそうな技術ではなく、ただのファイルの置き場所でした。クラウドに上げた教材を、AIの作業環境がうまく読めない。「Cドライブにコピーして、このフォルダを作業対象に選び直してください」と言われ、雲のアイコンを緑のチェックに変える操作を、画面を見せながら一緒にやってもらう。
この手の地味なやり取りが、何往復もありました。AIは、ボタン一発で全部やる魔法ではない。隣に座って一緒に手を動かす同僚に近い。この距離感は、最後まで変わりませんでした。逆に言えば、必要なのは特別なスキルではなく、つまずいたら「これでいい?」と聞き返すだけの根気でした。
「感想を言うだけ」で、教材が育っていく
出てきたのは、ベトナム語を訳しただけの退屈なものではなく、日本人向けに組み直した教科書でした。
最初の版は、要点はきれいにまとまっていたけれど、私には物足りなかった。「初心者向けって、説明があって、練習問題もあるものじゃないか」とぶつけてみる。すると章ごとに、例題と解き方、練習問題と解答が足されていく。「冒頭に先輩と新人の会話を入れたい」と言えば、各章が二人のやり取りから始まる読みやすい形に変わる。「答えが全部入っていると練習にならない」と言えば、自分で穴を埋める練習用のページと、答え合わせ用の解答ページを分けて作り直してくれる。
私がやったのは、できあがりを見て感想を言うことだけ。それだけで教材が育っていきました。
ベトナム語の会計教材の動画に日本語字幕を入れる
動画もそうです。ベトナム語の音声を文字起こしして日本語の字幕をつけ、白い画面でも読めるよう黒い縁取りまで足してくれた。——そう、世間で「AIで字幕、すごい」と言われている、あれです。正直、おまけでした。「白くて読めない」「画面からはみ出してる」と言うたびに向こうが直す。私はコードを一行も書いていないし、書き方も知りません。
気づけば、教科書が一棚できていた
こうして感想を言い続けているうちに、手元には妙な量の教材が積み上がっていました。
基礎編と実務編で、あわせて十数冊分の日本語ノート。章ごとに、自分で穴を埋める練習用と、答え合わせ用にタブを分けたExcel。実在の会社をモデルにした一ヶ月分の取引を、仕入から決算、税務申告まで通しで打ち込んでいける演習ファイル。最新の税率に直された早見表まで。
ベトナム語が一文字も読めない人間の机に、自分専用の会計コースが一棚できていたわけです。買ってきた教材は、ベトナム語のまま本棚の奥で眠っている。私が毎日めくっているのは、自分が「こうしてほしい」と言い続けて育てた、日本語の方でした。
ドラえもんは、いちばん大きい道具を出すわけじゃない
おもしろかったのは、道具そのものを選んでくれたことです。
世間では「Claude Codeを学べ」「Codexがすごい」と最先端を煽られます。でも作業によっては、AIを使わないExcelのマクロ(VBA)やGASで十分なこともある。なんなら、社内で「使えない」と言われがちな無料のCopilotでできることもある。
AIに頼むと、そこまで含めて「これはこのやり方が向きますよ」と提案してくれる。四次元ポケットから一番でかい道具を出すのではなく、その場に合うやつを出す。煽り記事が「とにかく最新ツールを覚えろ」と言うのとは、まるで逆でした。
しかも、自分用の作業メモまで残していました。次に再開したとき同じ品質で続けられるよう、ここまでの方針と手順を自分でファイルに書き留めておく。だから日をまたいでも「前回の続きから」と言えばすぐ動き出せる。道具を出すだけでなく、出した道具を覚えていてくれるのです。
特別な知識も、流行りのスキルもいらない。やりたいことを、ふつうの日本語で言うだけ。入口は本当に、それだけなんです。
だから、順番はこうだ
私なりの今のところの結論はこうです。
まず、のび太でいい。勉強してから使うのではなく、泣きついてから、必要な分だけ覚える。
次に、出てきた道具を疑う。読めなくても、筋は確かめられる。
最後に、何を頼むかは自分で持つ。枠を決めるのは、最後まで人間の仕事だ。
情報商材やコンサルが「まず体系的に学んでから」と言うのは、たぶん、入口を高く見せたほうが商品が売れるからだと思います。
でも本当は、入口はのび太でいい。ベトナム語が一文字も読めない人間が、自分専用の会計教科書を一冊持てたのが、その証拠です。
道具は、もうあなたのポケットの中にある。あとは「ドラえも〜ん」と言えるかどうか、だけだと思います。
ぶっちゃけた話、今私のやっている業務はほとんどすべてAIで代替できると思う。
CoworkやClaude Code、Codexみたいなファイルがが読めるような感じで、ベトナムの法令とか業務で使う文書やテンプレなどをぶち込んでおいて、新しい情報がきたらそれに合わせた書類を作ってもらうようなのはメチャクチャ簡単。
日本本社から来るメールの問い合わせも数ヶ月前に送った情報を忘れてもう一回聞いてくるようなことばかりなので、メールとフォルダが読めるAIがあれば私は何もしなくて良いと思う。
ただ、会社で許されているAIはCopilotのBasic版だけ。先日書いたロボットの記事のように、旧式のロボでも乗り方によってはメチャクチャ有効に活用できるので、取り組んでみたいと思う。



