午前9時過ぎ、ハノイのHai Bà Trưngにある小さなパソコン屋にノートPCを持ち込んだ。

SSDを256GBから2TBへ交換し、メモリを8GBから16GBへ増やすこと。ついでに今のWindows環境を丸ごと新しいSSDへ移してもらう。

私は「パソコンなんて最低限でいい」派だった

私はかなり初期からChromebookを使っていた。

Chromebookのミニマリスト的思想が好きだった。端末そのものは最低限でいい。ファイルはGoogle Driveに置けばいい。メールはGmail、資料はGoogle Docs、データはGoogleのクラウドにある。パソコンが壊れても、新しい端末にログインすればまた仕事を始められる。

だから、ローカルストレージを何TBも積む意味がよく分からなかった。

仕事でも同じだった。Word、Excel、PowerPoint、メール。20年前から基本的にやっていることはそれほど変わっていない。Excelで何万行ものデータを回すような仕事でもなければ、メモリなんて2GBでも4GBでも仕事はできる。8GBあれば十分以上だと思っていた。

今回使っていたHPのノートPCも、Core i3、メモリ8GB、SSD256GB。私の感覚では何の問題もないスペックだった。

Google Driveがあるのだから、SSDも256GBあれば十分だろうと思っていた。

AIエージェントを使い始めるまでは。

Claude Codeは、こちらが頼んでいないファイルまでどんどん作る

Claude CodeやCodexを使い始めて、パソコンの中が急に騒がしくなった。

記事を書くだけならまだいい。ところがAIエージェントに「これを調べて」「Webサイトを試作して」「Excelを作って」「テストして」「別案も作って」とやらせると、裏では大量のファイルが生まれる。

プロジェクトのフォルダ、Gitの履歴、キャッシュ、Python環境、node_modules、画像、PDF、テスト用データ、失敗した試作品。

人間なら「これは要らないから作らない」と判断するものまで、AIはとりあえず作る。そして速い。人間が一週間かけて作る量を、数分で吐き出す。

ある日Cドライブを見ると、256GBのうち200GB以上を使っていた。

さらにタスクマネージャーを見ると、メモリ8GBのうち空きがわずか266MB。Chrome、Claude、ChatGPT、WSLなどを同時に動かすと、WindowsがSSDを仮想メモリとして大量に使っている。

ここで初めて気づいた。

AIエージェント時代には、クラウド中心だからローカルPCは貧弱でいい、とは限らない。

AIそのものはクラウドで動いていても、そのAIが働く作業場はこちらのパソコンだからだ。

では、ハノイでどこに頼むのか

まずハノイの店に何軒か問い合わせた。

「HPのノートPC。SSDを2TBへ。メモリを16GBへ。今のWindows環境はそのまま移したい。SSDとRAMのメーカーと型番、値段、作業時間を教えてください」

しかし、これがなかなか一回では返ってこない。ベトナムあるあるで、複数質問しても、かえって来る答えは1個。その1個すら明確な答えでなかったりする。

「できますよ」

とだけ返ってくる。

いや、何があるのかを聞いているのだ。

もう一度、「SSDはどのメーカーでいくらですか。RAMはどの型番ですか」と聞く。

また中途半端な短い返事が来る。気をつけたいのは、安いところは無名の部品を使っていて品質がどうかわからないこと。Shopee等でもSSDを購入しようとすると、本当かというような大量に安いものが出てくる。Samsungと書いてあっても信用はできない。

大手のAn Phát Computerにも聞いた。ここは対応がかなり明確だった。KingstonのSSDとRAMを型番まで指定してくれ、取り付けも無料。ただし、「データ関連の作業は一切やりません」とのことだった。

これはこれで、むしろ大手らしい。顧客のデータに触れて、消失や漏洩の責任を負うくらいなら、最初から扱わない。

しかし私は、今の設定をそのまま残したかった。データは全部Google Driveにあるとはいえ、Windowsを復旧させたり各種設定するのは嫌だ。

そこで最終的に選んだのが、Hai Bà Trưng、Lê Thanh NghịにあるGia Phát Bách KhoaというローカルのPC店だった。

最終的に決めたのは、

SSDがKingston NV3 2TB。

RAMがKingston DDR4-3200 8GB。もともとの8GBに追加して合計16GBにする。

SSDが935万VND、RAMが255万VND。Windows環境を旧SSDから新SSDへ丸ごとクローンする作業が20万VND。合計1,210万VNDだった。

予約金としてすぐに200万VNDを先に送ると、注文票まで作って送ってくれた。

2時間と言われたが、SSDがWindowsにより暗号化されていたため、解除に1時間

翌日の朝9時に店に着いてPCを渡す。

すぐ裏蓋を開けるのかと思ったら、そうではなかった。

まず何かを確認し始めた。そして店員から、「このPCはBitLockerでSSDが暗号化されているので、先に解除しないといけない」と言われた。

これだけで約1時間。

私は作業している人の真後ろで待っていた。

その後、新しいSSDらしきものをUSB-CでPCにつなぎ、クローン作業が始まった。画面にはDisk 1、Disk 2、Disk 3。進捗が70%、90%と進んでいく。

「Total 90%」。

もうすぐ終わると思った。

しかし90%からが長い。

同じくらいの時間に来た女性客もずっと待っている。

もう昼だ。

「あとどのくらいだろう」と画面を眺めていたら、90%表示から別の画面に切り替わり、時計のようなマークが回り始めた。

ようやく店員がPCを手に取った。

ここで初めて裏蓋が開いた。

SSDを交換し、RAMを追加する。

私はここまで約3時間、ほとんど何もせず店に座っていた。

10年近く前、スマホの修理で何回か修理屋にいったことがあるが、ほとんどの場合、客は作業者の目の前でずっと待っていたな。

ベトナムはSNSでどこから漏れたかわからないような人のプライベートな画像や動画が流れたりするのでこういう修理業者経由もけっこうあるのかもしれない。また、購入したはずのパーツと入れられたパーツが違うものだったりしないように隣の女性は見張っているのかもしれない。この店の人たちは信用できる人たちだと思えたが、私は私で隣の女性のように客としての役目を果たさなければならないと思って座っていた。

2TBと16GBになった

作業が終わり、Windowsが立ち上がった。

クローンなので、見た目は何も変わらない。

Chromeもある。Claudeもある。Google Driveもある。自分のファイルも設定もそのまま。

しかしタスクマネージャーを見ると、

Memory 16.0GB DDR4。

SSDもNVMeとして認識されている。

旧256GB SSDは消去せず、そのまま持ち帰った。万一何か起きても、元の環境はまだ手元にある。

そして面白かったのは、16GBにして「これでもう余裕だろう」と思ってタスクマネージャーを開いたときだった。

メモリ使用率、86%。

Chromeが約2.5GB、Claudeが約1.7GB、WSL系のVmmemが約1GB、ChatGPTが約600MB。そのほかWindowsのサービスが大量に動いている。

8GBでは足りなかったわけだ。

16GBにしてようやく、「普通にAIを何個も開いて使えるPC」になった程度なのかもしれない。

満足して家に帰る途中のバスの中で、ある人のXの投稿を見た。「24Gのメモリじゃ足りない。120万円払って最高級のMac Bookの48Gにするべきか」という。

ここで急に公開した。16Gで余裕だと思っていたが、私は16Gx16Gの32Gにするべきだったか。調べるとそれは可能らしい。まあ、必要になったらまたあの店に持っていってやってもらおう。

AI時代に変わるのは、ソフトだけではなかった

私はAI時代になれば、ますます端末はどうでもよくなると思っていた。

計算はクラウドでする。データもクラウドに置く。人間はブラウザさえあればいい。

少なくとも自分は、ずっとそういう使い方をしてきた。

ところがAIエージェントを使うようになると、少し違う世界が見えてきた。

人間が一つずつファイルを作っていた時代と違い、AIは一晩で数千、数万のファイルを作る。複数のAIを同時に立ち上げ、ブラウザを何十タブも開き、裏でLinux環境まで動く。

AIが優秀になるほど、人間の代わりに仕事をするプロセスがPCの中で増えていく。

そのとき必要になるのは、昔の「Officeが動けば十分」というPCとは少し違う。

今回私は、AIを使うために新しいパソコンを買ったわけではない。

ハノイの小さなPC屋へ行き、今ある安いノートPCにメモリとSSDを足した。

それだけだ。

でも、もしかするとこれから「AIを導入する」というのは、ChatGPTの有料プランに入ることだけではないのかもしれない。

AIにたくさん働かせるなら、AIが散らかしても大丈夫な作業場を用意する。