AIの能力が、また一段上がった感じがする。
2026年6月に登場したClaudeの最上位モデル「Fable 5」は、公開からわずか3日でアメリカ政府の輸出管理指令によって世界中で提供停止になった。その後7月に規制が解除されて復活したのだが、「一般公開されたAIが政府に止められる」という出来事自体が、能力の上がり方を象徴していると思う。
そんなモデルなので、私も期待して使ってみた。最初は、正直に言うと、普段使っているOpus 4.8との差がよくわからなかった。
これは「差がない」という意味ではない。「私の使い方程度では差が見えない」という意味だ。私の日常の用途では、一つ前のモデルで十分すぎるほど賢い。上限が上がっても、私の使い方が上限に届いていないのだ。
Fable5でやってみたこと
1.占い体系を完成
Fable5が使えるうちにやってみたかったことは、20年ほど前に「誕生日ですべてがわかる」と言い切る変わった科学者気質の人からもらった、占いのような体系の資料を使って、体系化された陰陽占いを作ること。
3年ほど彼にくっついて学んだが、説明が高度すぎて当時はまったく理解できず、情報も欠けていて、ずっと死蔵していた。計算能力が高いと聞いて、スキャンしてFable 5に入れてみたら、すごいものが出来上がった。自分の誕生日を入れると「これは私だ」と思える内容が返ってきて、親しい人で試しても同じだった。占いの真偽はさておき、人間側の理解力がボトルネックで20年眠っていた資料が、渡すだけで動くものになったという事実に驚いた。これがFable 5だからできたのかは、正直わからない。
2.頼んでもいないのに動画を作った
もう一つは動画だ。やってみたというより、Fable5が勝手にやった。作業の過程で、頼んでもいないのに、いきなり動画がゼロから生成された。これまでもベトナム語動画への日本語字幕入れなどはAIエージェントがあっという間にやってくれていたが、それは既存動画への加工だ。今回は指示なし・文脈理解・ポン出しで、完成度の高い動画が出てきた。試しに素材を渡して編集も頼んでみたら、自分で編集するより良い。
チャットAIが「点」なら、エージェントAIは「線」
私はAIを「能力拡張」だと思って使っている。文章が苦手でも書ける。絵が描けなくても生成できる。PC操作がわからなければ代わりにやってくれる。
ただ、少し前までは「画像内の文字が崩れる」「動画は素材の貼り合わせ」といった惜しさがあり、最後は人間が直すのが前提だった。それが今は、文脈を理解した上で適切なものが出てくる。
そしてもっと大きな変化は、能力が「点」で終わらなくなったことだ。
チャットAIには構造的な限界がある。一度に一つのことしかできないのだ。私も一時期、ブラウザのタブを複数開いて、こっちで文章、あっちで画像、と並行作業させていた。でも、それぞれのチャットは連動しない。Aのタブで決めたことをBのタブは知らないから、結局、人間の私がタブ間を走り回って情報を運ぶ係になる。
Claude CodeやCodex、Cowork、ChatGPT Workのようなエージェント型のAIは違う。同じフォルダ、同じファイル群を見ながら、調べる→まとめる→作る→整えるという一連の流れを進められる。複数のAIと人間が、同じプロジェクトを同時進行できる。点と点が線で結ばれる、というのはこういうことかと思った。
半年やってわかった。「全自動」は幻想だったが
ここからが本題だ。
私はサラリーマンとしての仕事の合間に妻と事業を立ち上げていて、テスト販売の段階にいる。2019年に一度挑戦して能力及ばず諦めたものを、今年のはじめに「AIの力を借りればできるはず」と再挑戦した。
正直、最初は思ったようにいかなかった。「全自動」を想像していたのに、実際はAIチャットでひとつひとつ作業し、画像は自分で調整し、動画も自分でコツコツつなぎ合わせていた。時間の制約は、AIがあっても消えなかった。製品をいじれば資料や宣伝がおろそかになり、その逆もまたしかり。本業のかたわらの限られた時間では、これが一番つらい。
しかし今のFable 5やChat GPT5.6を使ったClaude CodeやCowork、Chat GPT for Workを使えば、AIでほとんどできるようになっていた。特にありがたいのは動画だ。物理的な製品を扱う過程で写真や動画は勝手に溜まっていく。以前はそれを自分で選び、切り、つないでいた。今は溜まった素材をAIに渡すだけでいい。「素材を貯める」は本業のついでにできるが、「編集する」は別途時間を捻出しないとできない。後者が消えるのは、想像以上に大きかった。
それで、いま「AI社員」を作っている
そこで昨日から始めたのが、いま流行りの言い方をすれば「AI社員」づくりだ。ChatGPT Workを使って、事業をAIチームと一緒に回す体制を組んでいる。
考え方はシンプルで、人間がやることと、AIに向いている仕事を分けて、協力して進めるというものだ。
うちの場合、人間側に残すのは、試作、判断、撮影、販売、顧客対応、そして最終承認。物理的にものを扱う部分と、責任を取る部分だ。AI側に渡すのは、商品案、設計書、説明書、SNS投稿文、動画編集、字幕、ウェブサイト更新、ファイル整理。つまりバックオフィスと制作物の大半だ。
ただし、AI社員を働かせるには、人間の新入社員と同じで「会社のことを教える」必要がある。チャット履歴やAIのメモリ機能に頼ると、ツールを替えた瞬間に消えるし、AI同士で共有できない。だから事業フォルダの中に、事業の原則、今の状況、これまでの決定事項を書いたファイル群を置いて、どのAIもまずそれを読んでから仕事を始める、という形にしている。AIの頭の中ではなく、フォルダの中に会社の脳を置くイメージだ。
面白いのは、AIへの指示書に書いている内容が、ほとんど「新人への引き継ぎ資料」と同じだということ。勝手にファイルを消さない。わからない数字を推測しない。案を出したら承認を待つ。……書きながら、これは人間の部下に渡しても通用するなと何度も思った。
昨日始めたばかりなので、まだわからない
正直に書くと、この体制がどんな成果物を出してくるかは、まだわからない。始めたばかりだからだ。
予感はある。製品開発のような領域は、放っておくと「AIっぽいもの」が出てきて、人間の嗜好とずれていく気がする。
一方で、バックオフィス系——資料、記録、定型文書、ファイル管理、進行管理——は、もうAIで全部回せるんじゃないか、というところまで来ていると感じる。勤務先の仕事もAIエージェント使えれば、バックオフィス系はほぼ全自動できそうな気がする。しかも人間より早く正確に。



