はじめに
ベトナムに長く住んで仕事をしています。
ERC(企業登録証明書)、IRC(投資登録証明書)、CIT(法人税)、FCT(外国契約者税)——経験で「なんとなくわかった気」になっていましたが、体系的に学んだことがありませんでした。「投資法2025年の改正でERC先行取得が可能になった」とか「CIT法2025で工業団地優遇が廃止された」とか、法令を体系として説明しろと言われてもできません。
この記事は、そこから始まった試行錯誤の全記録です。AIに相談したら45分野に整理してくれて、手作業で3つのAIでDeep Researchして突き合わせていたところから、最終的にClaude Codeで45本の記事を自動生成するまでの話を書きます。
プログラミングの知識はゼロです。Claude Codeで簡単なアプリやウェブサイトをポン出しする程度はやったことがありますが、実務でどう使えばいいかはわかりませんでした。格好の練習ネタだと思ってやってみたら、Claude Codeの使い方だけでなく、ベトナムビジネスの法令体系そのものについてもかなり学びになり一石二鳥だと思いました。
私のAI遍歴:ChatGPT → Gemini → Claude
まず前提として、私のAIとの付き合いを書いておきます。
ずっとChatGPTとGeminiの2つに課金して使っていました。2023年に一時期Claudeを使いましたが、すぐ制限がくるのでやめました。そのときは他のAIとの違いもわかりませんでした。
今年に入ってClaudeも再登録しようとしましたが、なぜかアカウントがBanされてました。何度か異議申し立てをして、今年の2月終わりにようやく解除されました。
再登録して20ドルのProプランで数週間使ってみたら、チャットだけでも他のAIにはできないことが結構ありました。
一番驚いたのは、WordやExcelの成果物を直接作ってくれることです。コピペが要りません。しかも精度が高い。複数のExcelファイルを参照して別のファイルを作る作業が、自分なら数週間かかるところを数時間で終わります。
ただ、毎日すぐに制限が来て1〜2時間待たされたり、数日使えないこともありました。この便利さは手放せないと思い、100ドルのMaxプランに変更しました。
2月末に20ドルのプランに再登録して、2週間後には15ドルの追加料金を払ってでも使い、3週間後には100ドルのMaxプランに入っていました。100ドル払ってでも手放せないものになっています。
チャット → 成果物生成 → エージェント
こういうAIを求めていたのには理由があります。
年明けにベトナム語の行政書類を作る必要がありました。何を書いていいかわからず、AIに記入する情報を送って教えてもらいました。でも、教えてもらった内容を1つ1つ書類にコピペする作業が面倒でした。Geminiに聞いてもChatGPTに聞いても「私は記入はできません」の一点張りです。
サッカーの岡田監督が2年くらい前にこう言っていました。「AIはナビのようなものになる。AIが道を決めて、人間は目的地を決めて、あとは運転という作業をするだけ」。当時はそれは本当だと思いました。でもその「運転」は嫌だ。車の運転は別にいいですが、コピペ地獄は嫌です。
Antigravityなら作業までやってくれるのかと思っていじってみましたが、よく理解できませんでした。たぶんこれは、書類1枚記入できないAIチャットの世界にだけいた自分には、エージェントの世界との距離が大きすぎたのだと思います。
チャット(質問する)からいきなりエージェント(自動で作業させる)に飛ぶのは難しいです。間に「Claude.aiのように成果物を作ってくれるAI」が挟まると、わかりやすくなります。
チャット → 成果物生成 → エージェント。 この3段階が、プログラミングできない人間にとっての現実的なステップだと思います。
今回の45本自動生成は、まさにこの3段階を全部やった体験でした。
コンサルに聞けない、JETROは難しい
話をベトナム法令リサーチに戻します。
こういうことを体系的に解説しているのはJETROのウェブサイトだと思いますが、言葉が難しくて実務で何をすればいいかがピンときません。
コンサルは「わかっている前提」で話をします。私もバカだと思われるのが怖くて、わかったフリをして話を進めてしまいます。
コンサルのウェブサイトも「法令アップデート」系の記事が多く、基礎がわかっていないとなぜ大切なのかもわかりません。「CIT法2025で工業団地優遇が廃止」と言われても、そもそもCIT優遇の仕組みを知らなければ「で?」となります。
そこでAIに聞いてみました。「ベトナムでビジネスを行う上で知っておくべき法令分野を、コースみたいに整理してほしい」と。
返ってきたのが45分野のリストでした。会社設立、税務、労務、外為、コンプライアンス、そして2025〜2026年の法令改正。さらに、各分野をDeep Researchするためのプロンプトと、3つのAIの出力を社内資料やnote記事としてまとめるためのプロンプトも生成してくれました。計47個です。
3つのAIでDeep Research:間違いがあってはならない
ビジネスや法令の話なので、1つのAIの回答を鵜呑みにするわけにはいきません。
45分野それぞれについて、Claude、ChatGPT、Geminiの3つにDeep Researchをかけました。同じ質問を投げて回答を突き合わせ、統合ルールを決めました。
3つが一致する情報はそのまま採用
数値や法令番号が食い違う場合は、末尾の「要確認リスト」に記載
読む人が後で調べられるように、法令番号とURLを必ず残す
統合作業はClaudeのチャット(claude.ai)でやりました。3つの出力を貼り付けて、あらかじめ作っておいた統合用プロンプトを使うと、きれいにまとめてWordファイルとして出してくれました。
「これ、自分だけの問題じゃない」
作業を進めるうちに気づきました。ベトナムでビジネスをしている日本人は、たぶんみんな同じ状況です。長年住んでいる自分でもこれなのだから、来たばかりの人はもっとわかりにくいはずです。日本と同じだと思っていると危ない。
だったら、自分が作った45分野の解説を、誰でも読める形で公開したら役に立つんじゃないかと思いました。
手作業の限界:45分野 × 3つのAIでDeep Reserch + 統合 x 2バージョン = 地獄
ただ、問題がありました。
仕事にも使えるような詳細版と、noteで公開する記事の2バージョンが必要です。仕事用は自社の具体的な状況に当てはめた文脈で書き、公開版はどの業種の人にも役立つ一般的な記事にします。
45分野 × 2バージョン = 90本。
Deep ResearchはClaudeだと1時間かかることもあります。それに手作業を加えて45本を、仕事や子育ての合間にやるのは無理があります。
Claude Codeで自動化できないか
そこで思いついたのがClaude Codeでした。
Claude CodeはCursorにも入れていましたが、ターミナルからの操作は理解不能だったので、デスクトップアプリ版を使いました。
今までClaude Codeはほとんど触ったことがありませんでした。練習で簡単なアプリをポン出しで生成して、「スゲー!」とか言っているレベルで、でもこういうことはGeminiのCanvasでもできるよね?何が違うんだろうかと違いも理解できていませんでした。
Claudeチャットでの準備:ここで半日使った
いきなりClaude Codeに飛び込む前に、Claudeのチャットで準備をしました。
Xで「CLAUDE.mdが大切」という話は見ていましたが、それが何なのかは理解していませんでした。Claude Codeに「このプロジェクトではこういうルールで作業しろ」と教える設計書のようなものらしいです。私にそんなものが作れるはずもないので、Claudeに相談しながら全部作ってもらいました。
topics.json:プロンプト集のHTMLファイルから、45トピックのタイトル・カテゴリ・プロンプト本文を自動抽出
仕事用詳細版のルール:マーク禁止、法令番号は太字、日本との違いを必ず含める、末尾に専門家確認リスト
公開版のルール:会社名・地名・業種を一般化、コラム調、「赴任前に知っておくべき」視点
表の画像化ルール:PythonのmatplotlibでPNG生成
ファイル構成も全部教えてもらいました。
ただ、これをチャットのClaudeに頼んで手動でダウンロードしてフォルダに配置していきました。こういう作業こそClaude Codeに頼めばよかったと、あとから気づきました。
APIは要らなかった
この準備段階でおもしろいことがありました。
最初、Claudeは「Claude Codeでリサーチやレポート生成をするにはAnthropic APIキーが必要で、45トピック分で18ドルくらいかかる」と説明してくれました。
Maxプランに月額100ドル払っているのに、さらに追加で金がかかるのか——と聞きましたが、Claudeの答えは「そうです」。
Xで見ている情報と違います。Claude Codeは「Proプランに含まれている」と書いている人が多い。
そこでClaudeにXでのいくつかの事例を送り、「本当にAPIが必要なのかリサーチして」と頼んだら、公式ドキュメントを調べてこう返ってきました。
「すみません、私が間違っていました。Claude CodeはMaxプランに含まれています。APIキーは不要です。追加料金ゼロでできます。」
AIも間違えます。でも「間違ってた」と素直に言ってくれるのは信頼できます。結果的にAPIキーもTavilyというSearch APIも不要で、全部Maxプランの枠内で完結しました。
Claudeチャットでは、こうやって議論しながら方針を修正していく使い方がすごく便利でした。「fetch_all.pyを作ります」→「APIいらないならClaude Codeだけでよくない?」→「その通りです、作り直します」というやりとりを何度もしました。
ちなみにGemini ProでAntigravityのことを聞いたときにも似たようなことがありました。「GoogleがAntigravityというサービスを?面白い冗談ですね」と返されて、知らなかったようです。
Claude Codeで45本を自動生成
準備ができたので、Claude Codeに取りかかりました。
デスクトップ版を開いて作業フォルダを指定し、こう指示しました。
CLAUDE.mdを読んで、topics.jsonのNo.01〜15を処理して。各トピックについてWeb検索でリサーチして、仕事用詳細版と公開版を書いて、outputフォルダに保存して。
もちろんこの指示文も全部Claudeに作ってもらいました。私にこんな指示ができるわけがありません。JSONって何?というレベルです。
あとはClaude Codeが自動で進めます。1トピックずつ、検索して、レポートを書いて、ファイルに保存して、次に進む。
ただ、しょっちゅう「これやっていいですか?」と聞かれてAllowボタンを押さなければなりませんでした。45回同じことを繰り返すのにいちいち押すのは面倒でしたが、解決策はわかりませんでした。
朝5時に開始して、食事を作ったり子供の面倒をみたりしてAllowボタンを押せないことがよくありましたが、昼頃に45トピック分が完了しました。
成果物:何ができたか
Claude Codeが作ってくれたものです。
仕事用詳細版(45トピック):法令番号付き、自社の状況に当てはめた説明、日本との違い、アクションアイテム、専門家確認リスト。Wordファイルで出力。
公開版(45トピック):一般化した内容。コラム調。「赴任前に知っておくべき」視点。Markdownで出力。
表の画像化:レポート内の比較表をPythonでPNG画像に変換。Noteに貼り付けても崩れません。
Deep Researchほど深いリサーチではありませんが、Web検索をもとにした実用レベルの内容です。本当に精度が必要なトピックは、あとからClaude.aiのDeep Researchで個別に掘り下げればいいと思っています。
Noteへの投稿:ここだけは手作業
公開版をNoteに投稿するのだけは手作業でした。NoteにはAPIが公式に公開されていないので、自動投稿ができません。1記事ずつMarkdownをコピーして、編集画面に貼り付けて、タイトル画像を設定して、公開します。
タイトル画像はGoogleのNano Banana(Gemini画像生成)で作りました。45枚分のプロンプトをClaude.aiに作ってもらい、Google AI Studioで10枚ずつバッチ生成しました。ちなみにGemini ProのNano Bananaだと、10枚分のプロンプトを入れても1枚しか出てきませんでした。
ソーシャル・ネットワークの冒頭のあのシーン
映画「ソーシャル・ネットワーク」の冒頭で、ザッカーバーグがハッキングも含めていろんなものをプログラムで自動化しているシーンがあります。
いいなあ、おれもこんなことできたらなぁ……と思ってプログラミングを何度も学ぼうとしましたが、何度も挫折しました。
今回、Claude Codeのおかげで、プログラミングができなくてもそれに近いことができました。完全自動ではありませんが、90%は自動化できました。何でも聞いてくれるお友達ができたようです。
反省:初めてなので時間がかかりすぎた
正直に言うと、微調整にかなり時間を使いました。
最初はPythonスクリプトを作る方針だったのを、APIが不要だとわかって方針転換。CLAUDE.mdを何度も書き直しました。Claude Codeが別のプロジェクトフォルダを読み込んでしまって混乱したこともありました。
ある人がXでこう書いていました。「プロセスはAIに考えてもらって、人間は実現したいことを明確にする」。まさにその通りでした。
AIに「どうやるか」を聞くのは簡単です。難しいのは「何を実現したいか」を自分の中で明確にすること。そこがブレると、AIも迷います。
45本の法令解説記事は、このnoteアカウントで順次公開していきます。ベトナムでビジネスをする人、これからする人の参考になれば嬉しいです。
間違いを見つけた方は、ぜひコメントで教えてください。AIが書いたものは、人間が検証して初めて完成します。



