近所の会社で朝10時くらいから昼過ぎまでライブコマースをやっている。丸い眩しすぎるくらいの蛍光灯の前で女性がずっとしゃべっている。声は力強いが、顔は無表情。他にスタッフも2~3人いるが、みんなやる気はなさそう。

子供用の商品を扱っている会社らしい。食品でもアパレルでもなく、正確にはわからない。

アパートの2階にもそういう会社が入っているようだ。夜帰ってくると、きれいなドレスを来た女性が明るい丸い蛍光灯の中で、服を紹介しているような感じ。

日本人の感覚では、まったく理解できないのか、時代についていけなくて理解ができないのか…

テレビショッピングなら、テレビをつけたらたまたまやっていた、という偶然がある。チャンネルを変えようとしたら、ジャパネットの髙田明さんのあの声に引き込まれてしまった、という経験は多くの日本人にあるだろう。

しかしライブコマースは、わざわざスマホでアクセスして見るものだ。しかも髙田さんはカリスマだ。ライブコマース主はそうではない。向いの会社の女性の表情のない顔つきをみるとインフルエンサーですらないのではないか。

「ジャパネットたかたの劣化版みたいなものを、なぜわざわざ選んで見に行くのか?」

これが、私の最初の疑問だった。

ベトナムに長年住んでいるが、日本とベトナムの文化の違いには相当慣れたつもりでいた。でも、この「ライブコマース」という現象だけは、腹の底から理解できなかった。

家業でクリスタル屋を営む20代の若い人も、毎日実店舗を閉めた後にライブコマースでかなり稼いでいるよう。彼は最近車とアパートを買った。

気になって調べた。


第1章:そもそも「わざわざ見に行く」のか「流されて見てしまう」のか

私の最初の疑問に答えよう。結論から言えば、「両方ある」。そしてこの「両方ある」という構造こそが、ライブコマースの爆発力の源泉だ。

アルゴリズムが「出会い」を作るプラットフォーム

TikTok(中国版はDouyin/抖音)は、ByteDanceが「興趣電商(Interest E-commerce)」と呼ぶモデルの代表格だ。

ユーザーはショート動画のフィードをスワイプしている。面白い猫の動画を見て、次に料理の動画を見て、その次にライブ配信のルームに自然に引き込まれる。購買意図はゼロだ。「何か買おう」と思ってアプリを開いた人はほとんどいない。

しかしアルゴリズムが、そのユーザーの視聴傾向・滞在時間・過去の行動から「この人はこのライブ配信に興味を持つ確率が高い」と判断し、フィードに差し込む。ユーザーは「たまたま見てしまう」。

これは、テレビのザッピングでジャパネットに引っかかるのと似ているようで、根本的に違う。テレビのザッピングは偶然だが、TikTokのフィードは「偶然に見せかけた必然」だ。アルゴリズムがその人の嗜好を解析した上で、意図的にライブ配信を差し込んでいる。

2025年時点でTikTok Shop日本版のGMVの約70%が「コンテンツ起点」の購入——つまり「検索して買う」ではなく「見ていたら欲しくなった」で成立している。

「わざわざ見に行く」プラットフォーム

一方、中国のTaobao Live(淘宝直播)は「意図型」だ。ユーザーはそもそも「何かを買いたい」という目的でアプリを開く。ライブ配信は商品ページの延長として機能し、店舗が運営する配信がGMV(流通総額)の過半数を占める。ライブコマース利用者の74%がTaobao Liveを使っており、最も利用率が高い。

そしてベトナムで面白いのがFacebook Liveだ。

ベトナム人の77%が週1回以上ライブ配信を視聴しているという調査がある。Facebook Liveはベトナムのライブコマースプラットフォームとしてシェア31.9%で、実はTikTokの17.2%を上回る。

Facebook Liveの特徴は「コミュニティ型」だ。Facebookグループ内でのコミュニティ商取引が発達しており、視聴者はお気に入りの販売者のライブ配信を意図的にフォローし、視聴する。そしてコメント欄に「chốt đơn(チョット・ドン=注文確定)」と書き込んで注文する。

つまりベトナムでは「アルゴリズムに流されて出会う」(TikTok)と「信頼する売り手を追いかけて見に行く」(Facebook Live)の両方が共存している。これが、月250万セッションという驚異的な配信数を支えている構造だ。

プラットフォーム 発見のされ方 ユーザー心理 TikTok/Douyin アルゴリズムがプッシュ エンタメ中の衝動購入 Taobao Live 購買目的で検索 買うつもりで来ている Facebook Live(ベトナム) 信頼する販売者をフォロー この人から買いたい Shopee Live マーケットプレイス内で遭遇 価格比較中のエンゲージメント

向かいの会社のライブ配信を見ている人たちは、おそらくFacebookかTikTokでフォローしているか、アルゴリズムで流れてきて見始めた人たちだ。そしてその両方が、半日の配信を支えている。


第2章:なぜ人は「見てしまい」、なぜ「買ってしまう」のか

ここが本稿の核心だ。

ライブコマースの視聴が止められない理由を調べていくと、5つの心理メカニズムが浮かび上がってくる。どれも単体では大した力を持たないが、5つが同時に作用すると、人は財布を開いてしまう。

パラソーシャル関係(擬似的な親密さ)

聞き慣れない言葉だが、これがライブコマースの心理的基盤だ。

視聴者は配信者を「友人」のように感じる。一方向的な心理的つながりだが、本人にとっては「友達の勧め」に近い感覚で商品を見ている。テレビショッピングのプロの司会者との関係は弱く一方向的だが、ライブコマースの配信者は視聴者の名前を呼び、質問にリアルタイムで答える。

「自分のコメントを読んでもらえるかもしれない」——この期待が参加感を高め、離脱を防ぐ。

中国のトップライバー・李佳琦(リー・ジャーチー)のファンは「彼は私たちからお金を稼いでいるが、私たちはそれに満足している」と語る。これはアイドルへの「推し活」と同じ心理構造だが、その先に「購買」が直結している点が決定的に違う。

社会的証明のリアルタイム可視化

「XX人が視聴中」「XX人がすでに購入」のカウンター。チャット欄に流れる「買った!」「3つ注文!」のコメント。

これが催眠的な群衆行動を生み出す。

テレビショッピングでは「他の人が買っている」ことを実感する手段がなかった。「お電話が殺到しています」とナレーターが言っても、それを視覚的に確認することはできない。しかしライブコマースでは、購入者の名前とコメントがリアルタイムで画面を流れていく。「みんな買ってるなら大丈夫だろう」——人間の社会的動物としての本能が刺激される。

FOMO(Fear Of Missing Out/見逃し恐怖)

「限定50個」「あと3分で終了」「カウントダウン:3、2、1」。

限定商品に対する衝動購買の可能性は78%上昇するという調査結果がある。ジャパネットたかたの「限定○台」と同じ手法だが、ライブ配信では「あと何個」がリアルタイムで減っていくのが見える。この視覚的な希少性の演出が、桁違いの緊急感を生む。

変動報酬によるドーパミンループ

これが一番恐ろしい。

「次に何が出るかわからない」「フラッシュセールがいつ始まるか」——この不確実性が、脳の報酬系を刺激する。神経科学の研究では、脳の報酬系(側坐核)は購入後ではなく、購入の「予期」段階でもっとも活性化し、ドーパミンが放出されることがわかっている。

つまり、買う前の「わくわく感」が脳にとっての報酬なのだ。そしてこのわくわく感を維持するために、視聴者は配信を見続ける。ギャンブルと同じメカニズムだと言えば、その危うさが伝わるだろうか。

認知的負荷の低減

最後に、これは特に中国の消費者で顕著な傾向だが、「信頼する配信者に商品選択を委ねることで、自分で検索・比較・評価する手間を省ける」という実用的なメリットがある。

Amazonで商品を探したことがある人なら分かるだろう。レビューを読み、スペックを比較し、偽レビューを見分け、最安値を探す。あの疲れる作業を、「この人が勧めるなら大丈夫」の一言で省略できる。情報過多の時代における、意思決定の外部委託だ。


この5つが同時に作用するのがライブコマースの現場だ。

友達のような配信者が(パラソーシャル関係)、みんなが買っている中で(社会的証明)、あと3分で終わる限定品を(FOMO)、次に何が出るかわからないわくわく感の中で(ドーパミンループ)、「これいいよ」と選んでくれる(認知的負荷の低減)。

ジャパネットたかたの「劣化版」どころではなかった。ジャパネットが「テレビという一方向メディアでできることの極限」だとすれば、ライブコマースは「双方向+アルゴリズム+モバイル決済」で、その限界を突破した進化形だった。

向かいの会社の女性の声が半日止まらない理由が、ようやく理解できた。


第3章:妻の親戚が店を閉めた後に車とアパートを買った話

冒頭で親戚の若者がクリスタルの石をライブコマースで販売して、車とアパートを買った話をした。日本で「クリスタルの石をネットのライブ配信で売って車が買えた」と言ったら、ほとんどの人は信じないだろう。しかしベトナムでは、これが珍しくない成功例として語られている。

ベトナムのライブコマース市場の数字を見れば、この話が例外ではないことがわかる。

ベトナムのeコマース市場は2024年に250億ドル超(前年比20%成長)。月間250万セッションのライブ配信が行われている。TikTok Shopのベトナム市場シェアは42%に急伸し、あるカップルの17時間ライブ配信が1,000億VND(約4億円)を売り上げた事例もある。

もっと身近な例がある。バクザン省の元Samsung工場労働者・Vi Thi Anh(ヴィ・ティ・アン)さんは、TikTokフォロワー35万人を持ち、手作り米麺(bún)をライブ販売している。バクカン省の農家Luong Quang Dai(ルオン・クアン・ダイ)さんは、TikTokとFacebookで干しバナナや春雨を販売し、月収がライブ配信前の10倍以上になった。月1億VND(約60万円)の貯蓄ができるようになったという。

工場労働者が。農家が。スマホ1台で。

これがベトナムの現実だ。


第4章:110兆円の怪物——中国のライブコマースはなぜここまで巨大化したのか

妻の親戚の話だけでは「ベトナムで流行ってるんだね」で終わってしまう。しかしこの現象の本質を理解するには、震源地である中国の話を避けて通れない。

中国のライブコマース市場は2017年の196億元から2024年の約5.33兆元(約110兆円)へ、7年で270倍に成長した。2024年12月時点でECライブ視聴ユーザーは5.97億人、ネット民の54.7%に達する。全オンライン小売の3分の1がライブ経由で取引されている。

110兆円とは何か。日本の国家予算(一般会計)に匹敵する金額が、スマホの画面越しの「買って!」で動いている。

文化:关系(グアンシー)と热闹(レナオ)

中国社会では、人間関係に基づく信頼——关系(グアンシー)——が購買を左右する。誰が勧めているかが、何を勧めているかよりも重要だ。ライブ配信では「速成关系」が形成され、配信者との擬似的な人間関係が短時間で構築される。

さらに重要なのが热闹(レナオ)——にぎやかさを楽しむ感覚だ。コメント欄の活発なやりとり、注文の読み上げ、カウントダウン。これが祭りのような集合的な熱気を生む。中国文化における「にぎやかなところに人が集まり、人が集まるからさらににぎやかになる」という正のフィードバックループが、ライブコマースと完璧に親和した。

インフラ:モバイルファースト×キャッシュレス

中国はデスクトップインターネットの時代を飛ばし、モバイルファーストのインターネット経済に直接移行した。スマートフォン普及率95%超、モバイル決済ユーザー9.69億人。Alipay利用率92%、WeChat Pay 85%。

ライブ配信を見る→欲しいと思う→タップする→決済完了。この全プロセスがアプリ内で30秒以内に完結する。衝動購入のハードルが極限まで下がっている。

日本のテレビショッピングでは、「電話をかける」「オペレーターに繋がるまで待つ」「住所を伝える」というプロセスがあった。この間に冷静になって「やっぱりやめよう」と思う時間がある。ライブコマースにはその猶予がない。

COVID-19という触媒

2020年のライブコマース市場は前年比196%成長した。自宅に閉じ込められた消費者にとって、ライブ配信アプリは仮想的なショッピングモール、青果市場、食料品店のすべてを兼ねた。2〜5月だけで400万回以上のライブ販売セッションが実施されている。

パンデミックは「仕方なくオンラインで買う」という行動を強制し、その結果「オンラインで買う方が便利だし楽しい」という学習が起きた。一度学習された消費行動は、パンデミック後も元に戻らなかった。


第5章:「買って!買って!買って!」——ライブコマースの販売テクニック

ここからは、向かいの会社の女性が半日かけてやっていることの中身に迫る。

ライブコマースの販売テクニックは、かなり体系化されている。中国のトップライバー・李佳琦の手法が業界の「教科書」とされており、各国のライバーがこれを学んで応用している。

李佳琦の「型」

李佳琦は中国で「口紅王子」と呼ばれ、1回の配信で380色の口紅を自ら試すことで知られる。彼の手法を分解するとこうなる。

まず、感情的な呼びかけとキャッチフレーズ。「Oh my god!」「買它!(マイ・ター=買って!)」「絶対絶対絶対絶対絶対試して!」——短く力強いフレーズで注意を引きつけ、衝動を喚起する。

次に、カウントダウンと限定数量。「3、2、1。1万個限定。急いで!」在庫数がリアルタイムで減っていく表示と、新規注文の読み上げが同時に行われる。限定時間セールはコンバージョン率を約50%向上させるという研究結果がある。

そして、アンカリング(価格参照点の操作)。通常価格とライブ配信限定価格を並べて表示し、「お得感」を最大化する。トップKOLはブランドに40〜50%の値引きを要求するため、ライブ配信価格は実際に過去30日間の最低価格であることが多い。

配信の標準フォーマット

典型的なライブ配信は決まった流れがある。

ウォームアップ(雑談・視聴者との交流、10〜15分)→ 商品紹介(ストーリーテリング)→ デモンストレーション(実際に使用・着用・試食)→ ディール公開(通常価格との比較)→ カウントダウン(「3、2、1」)→ 購入ボタン開放(ワンクリック)。

1商品あたり5〜15分のローテーションで、1回の配信は4〜6時間、数十から数百の商品を紹介する。向かいの会社が「半日やっている」のは、この業界では標準的な配信時間だったわけだ。

「これが欲しい人は1と打って!」の威力

ライブコマースにおける最も強力なテクニックの一つが、コメントの活用だ。

「これが欲しい人はコメントに1と打って!」——この一言が視聴者に参加感を与える。配信者がユーザー名を呼び出し質問に答えることで「見られている感覚」が生まれ、傍観者が購入者に変わる。

これは日本のテレビショッピングには存在しない要素だ。髙田明さんがどれだけ情熱的に語りかけても、視聴者はテレビの前で受動的に座っているしかない。しかしライブコマースでは、視聴者が「1」と打った瞬間に、その人は「観客」から「参加者」に変わる。

ジャパネットたかたとの共通点と決定的な違い

ジャパネットたかた(2024年度売上2,725億円、過去最高更新)は、一方向のテレビメディアでありながら、ライブコマースの本質を先取りしたモデルだ。

共通点は意外なほど多い。髙田明の「商品スペックではなく、購入後の生活の変化を伝える」スタイルは、中国のトップKOLのストーリーテリングとまったく同じ発想だ。「限定○台」による緊急性の創出、「金利・手数料ジャパネット負担」(年間約50億円のコスト)による心理的ハードルの低減、そしてパーソナリティへの信頼——これらはライブコマースの核心要素そのものだ。

しかし決定的な違いが3つある。

第一に、双方向性の欠如。テレビは一方向で、視聴者の質問にリアルタイムで応答できない。第二に、ターゲット層の違い。ジャパネットの中心顧客は40〜70代だが、中国ライブコマースの主力は20〜40代だ。第三に、スケーラビリティ。ジャパネットは1社で年商2,725億円だが、中国のライブコマース市場全体は110兆円規模であり、数十万人のKOLと3万超のMCN(マルチチャンネルネットワーク)がエコシステムを形成している。

つまりジャパネットは「天才的な個人が一方向メディアの限界内でできることの極限」であり、ライブコマースは「その限界を取り払ったときに何が起きるか」の答えだ。


第6章:ベトナム——「ライブコマース先進国」の現場

中国の話が長くなったが、ここからは私が住んでいるベトナムの話に戻る。

ベトナムのeコマース市場は2024年に250億ドル超に達した。人口約1億人のうち70%が35歳未満。スマートフォン普及率84%。この若くてデジタルネイティブな人口構成が、ライブコマースの爆発的な普及を支えている。

TikTok Shop:市場シェア42%の破壊力

TikTok Shop Vietnamは2022年4月のローンチからわずか3年で市場シェア約42%に急伸した。Gen Z(Z世代)の80%以上が利用しており、若年層の購買チャネルとしてはすでに支配的な地位にある。

先述のカップルの17時間ライブ配信で1,000億VND(約4億円)を売り上げた事例は極端だが、その広告リーチが6,700万人——ベトナム人口の約7割——に達したという事実は、このプラットフォームのスケールを示している。

ただし、2026年3月からTikTok Shopベトナムの手数料が12.5〜14.5%に引き上げられた。Mall出店で14.5%。これはセラーにとってかなりの負担であり、今後の動向に注目が必要だ。

Facebook Live:「chốt đơn文化」の強さ

TikTokの華々しい成長の陰で見過ごされがちだが、ベトナムのライブコマースプラットフォームとして最大のシェアを持つのは実はFacebook Liveだ。シェア31.9%で、TikTokの17.2%を大きく上回る(Shopeeを含めたeコマース全体ではShopeeが最大だが、ライブコマースに限るとFacebookが強い)。

Facebook Liveの強みは、Facebookグループ内のコミュニティ商取引が深く根付いていることだ。ベトナムのFacebookユーザーは7,200万〜7,270万人。多くの消費者が、お気に入りの販売者のグループに参加し、定期的にライブ配信を視聴する。

注文方法も独特で、コメント欄に「chốt đơn」(注文確定)と書き込むだけ。決済システムが統合されているTikTok Shopと比べると原始的に見えるが、この「コメントで注文する」というシンプルさが、デジタルリテラシーの高くない層にも浸透した理由だ。

Shopee Live:マーケットプレイスの中の配信

ShopeeはGMVベースではベトナム最大のeコマースプラットフォームで、2024年のGMVは93億ドル。しかしTikTok Shopの追い上げで、シェアは2024年の66.7%から2025年Q3には56%に低下している。

Shopee Liveはマーケットプレイス内統合型で、ユーザーはすでに「買い物モード」で閲覧中にライブ配信に遭遇する。2024年にShopeeユーザーは2.6億時間のショッピングコンテンツを視聴した。

Zalo:最大のアプリだが、ライブコマースは未搭載

ベトナム最大のアプリであるZalo(月間アクティブユーザー7,650万人、利用率98%)は、TikTokやShopeeのような専用ライブコマース機能を持っていない。CRM・決済機能(ZaloPay)はあるが、ライブ配信→購入のシームレスな導線はまだ構築されていない。これは今後の展開に注目すべきポイントだ。

決済インフラ:MoMoの普及と残る現金文化

ベトナムのキャッシュレス決済は急速に普及しているが、まだ道半ばだ。MoMoがユーザー3,100万〜4,000万人でシェア56%、ZaloPayが2,100万人で23%、VNPayが15%。しかし現金取引はまだ55%を占めており、特に農村部でのデジタル決済浸透が課題だ。

これは中国(Alipay+WeChat Payで実質100%近いカバレッジ)との大きな差であり、ベトナムのライブコマースがさらに成長するための次の壁でもある。


第7章:なぜ日本では流行らないのか——7つの壁

ベトナムの話を書いてきて、自然と浮かぶ疑問がある。なぜ日本では流行らないのか。

日本のライブコマース市場は推計約3,000億円(2023年)。中国の110兆円と比べると100分の1以下だ。2021年の調査では18〜59歳の5,000人のうち、ライブコマースを「まったく知らない」が56.8%、「視聴し商品を購入したことがある」はわずか5.8%だった。

冒頭で書いた通り、私自身がライブコマースを理解できなかった一人だ。しかし調べてみると、「理解できない」のは個人の感覚ではなく、日本社会の構造的な問題だったことがわかる。

壁①:カリスマ配信者の不在

日本のライブ配信文化は「オタク文化」起源で、女性アイドルへの投げ銭モデルが主流だった。「共感」ではなく「好き」に基づく関係であるため、商品販売には繋がりにくい。「推しが勧めるから買う」と「信頼する人が勧めるから買う」は似て非なるものだ。

壁②:専用プラットフォームの不在と相次ぐ撤退

PinQul(2017-2018)、メルカリチャンネル(2017-2020)、Yahoo!ショッピングLIVE(2017-2020)、楽天LIVE(2019-2021)、LINE LIVEBUY(〜2024年7月)——日本のライブコマース元年とされた2017年以降、大手が次々と参入し、次々と撤退した。プラットフォームが育つ前に消えてしまった。

壁③:既存小売インフラの充実

数歩歩けばコンビニがあり、スーパーがあり、ショッピングモールがある。「ライブ配信で買う」動機が、物理的に弱い。ベトナムの農村部では、近くに良い店がないからこそオンラインで買う合理性がある。日本にはその切実さがない。

壁④:既存ECの強さ

Amazon Japan、楽天市場(1億1,140万ユーザー、GMV 6.1兆円)、Yahoo!ショッピング。充実したレビュー文化と確立されたECインフラがすでにある。ライブコマースが「なくても困らない」状態だ。

壁⑤:慎重な消費者心理

日本の消費者は購入前に大量の情報を求める。レビューを読み、比較サイトを見て、スペックを確認する。「配信者が勧めているから」で即決する文化的土壌が薄い。第2章で書いた「認知的負荷の低減」というメリットが、日本人にはメリットとして機能しにくい。

壁⑥:公開コメントへの躊躇

中国やベトナムのように積極的にコメントで交流する習慣が日本にはない。「1と打って!」と言われても、多くの日本人は躊躇する。匿名文化は発達しているが、ライブ配信でのリアルタイムな自己開示には抵抗がある。

壁⑦:コスト構造

ストリーミングサーバー代やインフルエンサーへの報酬が、初期段階の売上に見合わなかった。これはプラットフォームの撤退ラッシュと直接関係している。

TikTok Shop日本:変化の兆し

2025年6月30日、TikTok Shopが日本で正式ローンチした。ローンチ3ヶ月で売上約30億円、2025年11月の月間GMV推計は約36.4億円(前月比68.4%増)。アクティブセラー数5万社超、クリエイター数20万人超。

成功事例も出始めている。おからお菓子ブランド「OKARAT」の工場長動画が累計再生1,400万回を突破し「TikTokトレンド大賞2025」を受賞。コスメブランド「MilleFée」のリラックマコラボパフが美容カテゴリ売上動画1位。日清食品、花王(KATE)、ユニリーバなど大手も参画している。

ただし年間市場規模予測は約500億円。ベトナムの市場規模と比較しても、まだ助走段階というのが率直な評価だ。


第8章:食品ライブコマースという「調理実演=最強の商品説明」

ここまで読んで、「面白いけど自分のビジネスには関係ないな」と思った方がいるかもしれない。しかし、食品領域でライブコマースに何が起きているかを見ると、その認識は変わるかもしれない。

中国ではTaobao Liveの統計で11万人以上の農家がライブ配信者に転身し、330万回のライブ配信セッションを実施した。Douyinでは2022〜2023年の1年間で農産物・特産品の配信時間が3,778万時間に達している。

食品ライブコマースの最大の強みは、「調理実演がそのまま最も説得力のある商品説明になる」ことだ。消費者の60%が料理デモ視聴後に食品購入の可能性が上昇するという調査があり、ライブ食品配信は静的な商品リスティングと比較してコンバージョン率が3倍という数字が出ている。

ベトナムでも食品系のライブ配信は急速に拡大している。先述のVi Thi Anhさん(手作り米麺)やLuong Quang Daiさん(干しバナナ・春雨)に加え、メコンデルタのChanh Thu社はTikTokライブで冷凍ドリアンを販売し、2025年までにライブ配信で100万個の販売を目標としている。

共通するのは「生産現場から直接配信する」ことによる信頼構築だ。農家が畑や作業場からライブ配信し、食材の鮮度・製造過程・地域の背景を見せることで、「産地直送」の信頼感を画面越しに伝えている。

日本でも三越伊勢丹のお中元ライブコマースが食品分野の成功事例として知られる。2020年のお中元では3万人以上の視聴者を獲得し、お中元ストア全体の売上が前年比約2倍に達した。食品のストーリーや産地背景を丁寧に紹介する手法が功を奏した形だ。

米国ではThe Fresh Marketがインタラクティブな料理デモを通じて食材販売を行い、クリックスルー率が業界平均の約7倍、コンバージョン率がサイト平均の650%増を達成している。

食品とライブコマースの相性は、国を問わず良い。「目の前で作る」「リアルタイムで質問に答える」「完成品を見せる」——この三点セットが、食品購入における最大の不安(「本当においしいのか」「写真と違わないか」)を払拭するからだ。


第9章:アルゴリズムの向こう側——プラットフォームの経済学

最後に、この「ライブコマース経済圏」がどのように成り立っているのかを整理しておきたい。ベトナムでビジネスを考えている人にとって、プラットフォームの手数料構造とインセンティブ設計は実務的に重要な情報だ。

TikTok/Douyinのアルゴリズム:300再生からの段階的拡散

ライブ配信が審査を通過すると、TikTokのシステムは初期トラフィックプール(約300再生)を割り当てる。再生完了率・コメント率・いいね率・シェア率の4つのデータに基づき、段階的にトラフィックプールが拡大する仕組みだ。

2024年Q1のアルゴリズム変更では、7秒以上の視聴時間の重み付けが18%増加し、50文字以上の質の高いコメントは単純な絵文字反応の3倍の重みを持つようになった。つまり「視聴者を楽しませつつ、実際に購入に導ける配信」がアルゴリズム的に優遇される構造だ。

プラットフォーム手数料

プラットフォーム 基本手数料 特記事項 TikTok Shop(ベトナム) 12.5〜14.5% 2026年3月〜引き上げ。Mall出店は14.5% TikTok Shop(日本) 7%(税込) 新規出店者90日間3%優遇 Shopee(東南アジア) コミッション2〜6%+取引手数料2.18% 新規3ヶ月間コミッション無料

MCN(マルチチャンネルネットワーク)という存在

中国には3万超のMCNが存在し、新人ライバーのトレーニングからブランドとのマッチング、サプライチェーン管理まで一括支援する。最大手の无忧传媒は約9万人のKOLを管理し、合計18億人のフォロワーを抱える。

ベトナムでもMCN的な機能を持つ事業者が増えており、個人がゼロからライブコマースを始める際のサポート基盤が整いつつある。

KOLとの協業のリアル

ただし、KOL(Key Opinion Leader)との協業は必ずしも利益が出るわけではない。あるブランドの事例では、人気ライバーへの依頼で固定費30万元+売上の25%コミッション+商品40%値引き要求が条件となり、5時間のライブで300万元を売り上げたが、物流・プラットフォーム料・KOL支払いを差し引くと利益はほぼゼロだったという。

ライブコマースは「売上は立つが利益が残らない」リスクを常に孕んでいる。これはベトナムで事業を考える日本人にとって、最も重要な警告だと思う。


じゃあ無名の個人が配信したら、何人見てくれるのか

ここまで読んで、こう思った人がいるかもしれない。

「市場が110兆円だとか、17時間配信で4億円だとか、数字が大きすぎてピンとこない。結局、普通の個人が今日からライブ配信を始めたら、何人が見てくれるのか?」

これは非常に正しい疑問だ。楽天市場のどこかの無名ショップで「現在このページを見ている人:1人」と表示されているのを見たことがある人なら、その感覚は的確だ。

結論から言う。最初はゼロに近い。

TikTokのライブ配信の仕組みを調べると、同時視聴者ゼロの配信はアルゴリズム上ほぼ「見えない」状態になる。TikTokのLIVE発見タブは同時視聴者数でランキングされるため、視聴者が少ない=誰にも表示されない=さらに視聴者が来ない、という負のループに陥る。楽天の無名ショップと同じ構造だ。

では、ある程度回り始めたらどうなるか。業界のベンチマークによると、TikTok Shopのライブ配信における視聴者の購買転換率は約3%。つまり同時視聴100人で約3件の注文。同時視聴50〜100人のアクティブな視聴者がいれば、1セッションあたり50〜200ドル(約7,000〜30,000円)の収益が見込めるというのが、一般的なレンジだ。

「1セッションで7,000〜30,000円? それだけ?」と思うかもしれない。日本の感覚では、半日叫んで3万円は割に合わないように見える。

しかしここがベトナムの文脈で考える必要があるポイントだ。

ベトナムの工場労働者の月給は約400ドル(約6万円)。月に20日働いて日給3,000円。一方、ライブ配信で1セッション1万円の売上が出たとして、仕入れ原価やプラットフォーム手数料(TikTok Shopで12.5〜14.5%)を差し引くと、手元に残るのは売上の30〜50%程度だろう。1万円の売上なら3,000〜5,000円の粗利。それでも工場の日給1日分に相当する。

週3回配信すれば月12回。1回の粗利が4,000円として月48,000円。工場の月給6万円には届かないが、これはあくまで「同時視聴50人レベル」の話だ。配信を続けてフォロワーが増え、同時視聴が100人、200人と伸びれば、粗利は比例して増えていく。しかも自宅から、自分の好きな時間に、体を酷使せずに。

向かいの会社が半日叫んでいる理由は、ここにある。日本の感覚では「たったそれだけ?」だが、ベトナムの物価と給与水準では「工場で働くよりマシ」のラインを超える難度がそこまで高くないのだ。そして「マシ」のラインを超えたら、あとはスケールする可能性がある。工場の日給は何年勤めてもほぼ変わらないが、ライブ配信のフォロワーは積み上がる。

妻の親戚がクリスタルの石を売って車とアパートを買えた理由も同じ構造だが、こちらはスケールが違う。この店が扱っているのは、宝石サイズの小さなものからテーブルや仏像レベルの大型の天然石まで幅広い。アメジスト(紫水晶)のジオードを木製の台座に乗せたもの、翡翠の彫刻、水晶のクラスター——大型のものは1点で数百万〜数千万VND、ものによっては数億VND(数百万円)にもなる高額商材だ。1回の配信で大物が1〜2点売れれば、それだけで数十万円の売上が立つ。実店舗を構えていた頃は、来店客に限られていた商圏が、ライブ配信でベトナム全土に広がった。高額商材ほど「画面越しに実物を見せながら、石の色味や質感をリアルタイムで説明する」ライブ配信の強みが効く。実店舗の家賃も光熱費もスタッフの人件費もいらない。店を閉めた後に車とアパートを買えたのは、扱う商材の単価と利益率が高いからこそだが、それをベトナム全土の顧客に届ける手段としてライブコマースが機能した、ということだ。

つまりライブコマースの「成功」の基準は、国によって根本的に違う。

中国のトップKOLのように1回の配信で数億円を売り上げる必要はない。ベトナムでは、同時視聴50人・1日の売上1〜3万円でも、工場勤務を大きく上回る収入になる。この「ローカルな成功ライン」の低さが、ベトナムでライブコマースが爆発的に普及した、もう一つの構造的理由だ。

ただし、楽天の無名ショップと同じ「最初のゼロ」をどう突破するかという問題は残る。ここでTikTokのアルゴリズムが効いてくる。楽天では広告費を払わなければ上位表示されないが、TikTokでは、たった300回の初期表示で視聴者の反応が良ければ、アルゴリズムが自動的に表示範囲を拡大する。「金がなくても、面白ければ勝てる可能性がある」——この構造が、工場労働者や農家にもチャンスの扉を開いている。


第10章:ライブコマースが変えた「ベトナムの若者の働き方」

ここまでは「売る側の仕組み」と「買う側の心理」の話をしてきた。しかし、私がベトナムに来た2017年頃からの変化を振り返ると、ライブコマースがもたらした最も大きなインパクトは、売買の仕組みではなく「若者の労働観」だったのではないかと思う。

2017年頃の「副業」の風景

私がハノイに来た頃、ベトナムの若者の仕事は、だいたいパターンが決まっていた。オフィスや工場での仕事。副業や兼業でいえば、飲食店のアルバイト。日本人向けのカラオケやガールズバー。フィットネスジムのコーチ。モデル、英語講師。あとは自宅で食品や服などを販売したり。

「スマホ1台で、自宅から、自分の時間で」

それが今、明らかに変わってきている。会と。の30代の同僚も言っていたが、若者は自分たちが理解できない方法で稼いでいる。

印象レベルの話。昔は日本人がベトナムに来るとフォーチュナホテルに泊まるケースが多かった。行ったことがないが、地下にあるカラオケに綺麗な女性がいて、部屋まで連れていけたという。ただ、今はもう聞かない。中国人御用達のホテルになったようだ。

また、私が行かない場所の話しで申し訳ないが、リンラン通り(Linh Lang)通りに立っている女性たちが高齢化したような…。あくまで印象レベルで。

円安で日本人がベトナムであまりお金を使わなくなったということもあるが、これは労働市場の変化を映す鏡だと思っている。かつてあの通りに立っていた若い女性たちには、他に「割のいい選択肢」がなかった。しかし今、スマホの中にもっと安全で、もっと自分でコントロールできて、場合によってはもっと稼げる仕事がある。TikTokでライブ配信する方が、夜の通りに立つよりもはるかに合理的な選択になった。それ以外にも物理的に身体や時間を拘束されずに稼ぐ方法が多くある。結果として、あの通りに残っているのは、デジタルへの移行ができなかった人たちや世代だけということになるのか。

AFPの取材に答えたVi Thi Anh(ヴィ・ティ・アン)さんの言葉が象徴的だ。バクザン省のSamsung工場で月400ドルの「退屈な仕事」をしていた23歳の彼女は、解雇された後にTikTokで手作り米麺の販売を始め、35万人のフォロワーを獲得した。

ベトナムの教育心理学者Tran Thanh Nam氏はこう指摘している。「工場や工業団地の労働者になることは、若さと健康をすべて使い果たすことだ。そして多くの他の機会を失う」。

この言葉は、2017年に私がベトナムに来た時と今の最大の違いを正確に言い当てている。

かつて、ベトナムの特に田舎の若者にとって「他の機会」はほとんど存在しなかった。工場で働くか、サービス業で働くか、海外に出稼ぎに行くか。選択肢は限られていた。

しかし今、スマホ1台で「他の機会」にアクセスできる環境が整った。TikTokだけで2022年に30のデジタルトランスフォーメーション研修プログラムが実施され、数千人の受講者を集めた。元建設作業員のLoc Fuhoは250万人のフォロワーを持ち、左官とプラスター塗りのレッスンをライブ配信している。農家のLuong Quang Daiは「デジタル農家」として月に1億VND(約60万円)を貯蓄できるようになった。

日系企業にとっての意味

これはベトナムに進出する日系企業にとって、無視できない変化だ。

製造業の現場では「真面目に長く働いてくれる若い人材」を確保することが、極めて難しくなっている。若者にとって、工場の月400ドルの給与と、ライブコマースで「当たれば」月60万円以上を稼げる可能性を比べた時、工場勤務の魅力は相対的に低下している。

もちろん、ライブコマースで成功するのは一握りだ。教育心理の専門家が警告するように「短期間で立ち上がったビジネスは、短期間で失敗にもなり得る」。しかし、そのリスクを取ってでもチャレンジする若者が増えているという事実は、ベトナムの労働市場の構造的な変化を示唆している。


おわりに:窓の向こうの声が、世界を変えている

事務所の窓越しに聞こえてくる女性の声。

あの声が何をしているのか、今ならわかる。

彼女は、アルゴリズムによって「偶然に見せかけた必然」で視聴者と出会い、パラソーシャル関係で擬似的な親密さを構築し、社会的証明をリアルタイムで可視化し、FOMOとカウントダウンで緊急性を演出し、変動報酬のドーパミンループで視聴者を画面に釘付けにし、認知的負荷を低減して「この人が勧めるなら大丈夫」と思わせている。

半日の配信が、5つの心理メカニズムの精密な組み合わせだったのだ。

スキルや理解なども必要だが、髙田さんのようなカリスマやインフルエンサーのようである必要ですらない。向いの会社も冒頭に描いたように女性は無表情で話し続ける。スタッフややる気なさそう。それでもやっているということは効果があるということ。時々SNSで流れてくるライブコマーㇲも普通の人が、普通の服を来て、市場のように商品が山積みされたところに座ってはなしているだけ。

親戚が店を閉めた後に車とアパートを買えたのは、奇跡でも偶然でもない。中国で110兆円、東南アジアで2兆円の市場を生んだ構造変化が、ベトナムのごく普通の人の生活を変えている、その一例にすぎない。

日本に住んでいると、この現実はほぼ見えない。ライブコマースの認知率すら7割が「知らない」状態だ。TikTok Shopが日本でローンチしたが、まだ年間500億円規模。7つの壁は構造的で、すぐには崩れそうにない。

しかしベトナムに住んでいると、この変化は空気のように日常に溶け込んでいる。

向かいの会社が半日叫んでいる。妻の親戚がスマホで石を売っている。農家がTikTokで月60万円を貯蓄している。

これが、今のベトナムだ。

ベトナムへのビジネス進出を考えている方に一つだけ言えることがある。「テレビショッピングのネット版でしょ」という日本人的な先入観は、捨てた方がいい。ライブコマースは、消費者との関係構築の方法そのものが違う。それを理解しないまま、日本的なマーケティングの常識をベトナムに持ち込むと、目の前で起きている構造変化を見逃すことになる。

私自身、無表情で大きな声で話し続ける向かいの会社の声を正直バカにしていた人間だ。しかし調べてみて、あの声の向こうに110兆円の市場と、5つの心理メカニズムと、スマホ1台で人生を変えた農家たちの物語があることを知った。

窓の向こうの声に、もう少し耳を傾けてみてもいいのかもしれない。