ベトナムに住んでいると、最近、バイク市場に気になる変化を感じます。会社の近くに新しくオープンしたバイク販売店では、展示されている車両のほとんどが見たことのないメーカーの電動バイクです。また、週末に子どもの自転車を買うためバイク屋兼自転車屋を訪れても、日系メーカーのものがひとつもなく、Osakar(オサカー)など、これまであまり目にしなかったメーカーの電動バイク(125ccスクーターと同程度のサイズ)がばかりでした。こうした光景を目の当たりにすると、日本人として、やはり日系メーカーの今後の動向が気になります。

ベトナムのバイク市場の現状

各種報道によると、ベトナムの二輪車市場において日系メーカーは依然として約90%という高いシェアを維持しているとのことです。2024年の年間販売台数は290万台に達し、2025年第1四半期も前年同期比で約11%増と、市場自体は回復基調にあるようです。

しかし、その内訳に変化の兆しが見られます。特に若年層を中心に、免許不要で運転できる50cc以下の電動バイク(L1カテゴリー)の需要が急速に伸びています。これが、街中で電動バイクを見かける機会が増えている背景の一つと考えられます。

電動バイクメーカーの台頭

私がバイク店で見かけた「Osakar」もその一例ですが、ベトナムでは国産メーカーのVinFast(ビンファスト)がE2W市場で大きな存在感を示しています。他にも、Pega(ペガ)、中国のYadea(ヤデア)、高性能モデルを開発するDat Bike(ダットバイク)といった企業が市場での競争を繰り広げています。

特にVinFastは、2025年第1四半期の二輪の販売台数は前年同期比で184%増と急伸し、市場全体でも第3位に浮上したとのことで、その勢いには目を見張るものがあります。

日系メーカーの動向と戦略

それでは、日系メーカーはどのような対応をしているのでしょうか。

ホンダは学生層をターゲットとした電動バイク「ICON e:」を市場に投入しており、バッテリーレンタルという新たな販売方法も採用しています。ヤマハも「Neo's」というモデルを展開し、最近では価格改定によって競争力を高めようとしています。

日系メーカーが長年にわたり築き上げてきたブランドへの信頼、広範な販売網、そして充実したアフターサービスは、依然として大きな強みです。これらの要素が、すぐに他社に凌駕されることは考えにくいでしょう。しかし、街のバイク販売店の様変わりを見るにつけ、電動化の波は予想以上に速いペースで進んでいるのかもしれないと感じます。

ホンダやヤマハも、当然ながら電動バイクの開発は継続しており、グローバル市場ではさらに多くの電動モデルを投入する計画を持っています。ベトナム特有の市場スピードに、今後どのように対応していくのか注目されます。

今後の展望と気になる点

ベトナム政府は2050年までに「CO2排出実質ゼロ」を目標に掲げており、電動化への移行は今後も加速するでしょう。専門家の中には、2030年代には電動バイクが市場の主流になると予測する声も聞かれます。

消費者レベルでも、環境意識の高まりやランニングコストの低減といったメリットから、電動バイクへの関心は高まっています。一方で、車両本体価格の高さ、充電インフラの整備状況、航続距離に対する懸念といった課題も残されています。

新興メーカーが新しい技術やサービスで市場を切り拓こうとする中、日系メーカーがその品質と信頼性を武器に、この電動化という大きな変化にどう適応し、ベトナムの消費者に選ばれ続けていくのか。一人の日本人として、そしてベトナムで生活する者として、その行方を見守りたいと思います。

街の風景が少しずつ変わりゆく中で、今後もベトナムのバイク市場の動向に注目していきたいと考えています。