前職時代の同僚の経理マネージャーが、AIを学びたいと言っていた。

AI大好きの弁護士事務所があって、そこは全員にClaudeを使わせている。その事務所からの案内でAIセミナーに参加したそうだ。ただ、主催者は日本にもよくあるAIスクールのようなところで、画像生成だったりとてんこ盛りの内容。結局、自分はどうすれば良いのかはよくわからなかったらしい。でも、AIスキルが必要だという気持ちは強くなったらしい。

彼女の職場はGoogle Workspaceなので、Geminiは使える。ただ、複雑なファイル生成はできないし、経理の仕事は結局Excelのローカルファイルで回っている。だから私はClaudeを勧めた。

ただ、Claudeを入れても、多くの場合はこうなる。検索の代わりに使って、Geminiよりちょっと精度の高い答えをもらって、「便利だね」で終わる。

Claudeを使うべき理由はそこではない。複雑なファイルでも過剰品質なくらいに生成できること。Claude Codeを使えば、大量のファイルをまたいだ処理までできること。つまり「質問に答えるAI」ではなく「仕事をしてくれるAI」であることだ。

でも、AI=チャットで質問という頭から、仕事をしてもらうAIという認識に切り替わるには、試行錯誤が要る。その試行錯誤を独学でやれる人は少ない。

そこで、ベトナムの経理業務に特化したClaudeのテキストを作った。Claudeのチャットから始まって、Claude Codeまで含まれている(書きながら思ったが、Coworkも入れたほうがいいな)。

経理の時間はどこに消えているのか

私は経理の実務はやったことがない。ただ、よく見る光景がある。インボイスと納品書と発注書を、一枚ずつ、目で突き合わせている姿だ。

ベトナムの経理はExcelの達人が多い。彼女もこの突合作業を、Excel関数でマッチするかどうか確認する形にまで持っていっていた。ただし、入力は手入力だ。

計算や集計はとっくに関数と会計ソフトで効率化されている。それでも突合だけは残る。PDFのインボイス、紙の納品書、Excelの発注台帳——形式がバラバラの書類を読み比べる作業は、関数では代替できないからだ。

もうひとつ、各部門から送られてくるファイルの形式が全部違っていて、経理側が手作業で揃えて集計している、というのもよく見る。

つまり、Excelの達人が今も手作業でやっている仕事こそが、AIのいちばん得意な仕事と重なっている。

Claude Codeで教材を作った

AIの教材なら、当然AIに作ってもらうべきだ。Claudeのチャットで構成を考えて、Claude Codeで作成している。完成した順に公開していく方式だ。

作り方でひとつ決めていたことがある。プロンプトの書き方から教えない、ということだ。AIスクールには参加したことがないが、理路整然としたプロンプトの書き方を教わると、「自分にはこんなの書けない」で終わりかねない。だからこの教材の最初のレッスンは「モワンと頼む」。きれいなプロンプトは書かなくていい、から始まる。

教材の目的はふたつ。質問するAIではなく、作業するAIを体験すること。 ドボンと書類を入れて依頼したら、ExcelやWordの書類ができてくる——それを体験できるように作っている。そして、本人が理解して、会社に会社アカウントを申請できるようになること。 個人アカウントと架空データで練習して、効果とリスクを自分の言葉で説明できるようになって、会社に利用申請を出す。そこまでがゴールだ。

ベトナム語と日本語が切り替えられるので、試してみてほしい。

これは朝Claude Codeに依頼をして、私が会社で仕事をしている間にClaude Codeが作業し続け、昼休みフィードバックして、夕方デプロイした。

これからはまだ完成していない章を書き上げてもらい、わかりやすいように画像を作ってもらったり、スクリーンショットとってもらったり、動画を作ってもらう。全部Claude Codeでやってもらう。私は確認と、出てきたものを使ってみて、わがままをClaude Codeに返してデプロイするだけ。

Giáo trình thực hành Claude cho người làm kế toán vn-accounting-claude.hiroakikato.workers.dev


教材の中身

準備

  • 第0章 準備 — はじめる前に決めておくこと

第1部A 基礎編 — AIの動かし方

  • A0 モワンと頼む — きれいなプロンプトは書かなくていい

  • A1 資料を渡して、Excelを作らせる — 形式のちがう3枚が、1つの台帳ファイルになる

  • A2 突合させる — 発注書・納品書・インボイスの3点突合

  • A3 間違いを見つける — AIが誤読したときに、それに気づけるようになる

  • A4 揃えさせる — 部門ごとにバラバラな報告を、1枚の標準表にする

  • A5 作らせる — 曖昧な依頼から、関数入りのExcelを作らせる

  • A6 書かせる — 会社情報を登録して、Word文書を作らせる

  • A7 繰り返す — プロンプトのテンプレ化・Projects・メモリー

第1部B 業務編 — 経理業務カタログ

  • B1 支払前チェック — 支払依頼書一式の不備を洗い出す

  • B2 công nợ(債権債務照合)— 残高確認書の一括作成・差異の整理・滞留の分析

  • B3 銀行照合 — 銀行明細と帳簿の突合、未達の整理

  • B4 申告前チェック — 提出はソフト、検算はAI

  • B5 税務署対応 — công văn の読解と説明文書のドラフト

  • B6 給与・社会保険 — 給与計算の検算と手続書類の整理

  • B7 固定資産・CCDC — 償却スケジュールと配賦表を作らせる

  • B8 決算と監査 — 決算チェックリストと監査資料要求の捌き方

  • B9 本社対応と翻訳 — 月次報告・会計用語の日越対訳・説明メール

  • B10 法令の調べ方 — AIで当たりをつけて、必ず原文で確認する

第2部 Claude Codeで自動化

  • C1 フォルダを渡す — Codeタブの基本

  • C2 一括突合 — インボイス20枚×PO台帳を一度に突き合わせる

  • C3 電子インボイスXML処理 — XMLはPDFより確実に処理できる

  • C4 正規化の自動化 — A4をスクリプトにして毎月回す

  • C5 業務のSkill化 — 同じ体裁の文書を同じ品質で出す

  • C6 月次ルーチン指示書 — 1枚の指示書で月次を回す

終章

  • 終章 実データの線引き — 何を入れてよくて、何を入れないか

  • 終章の続き 会社への申請 — Tờ trình(利用申請書)テンプレート

演習で使う架空資料(発注書・納品書・インボイス・給与計算表など)も、すべてサイトからダウンロードできる。

レッスンとは別に、道具も置いた

そのまま使える道具のコーナーも作った。ブラウザの中だけで動き、入れたデータはどこにも送信されない。

第一弾は「電子インボイスXML → 一覧表」。XMLファイルを落とすと一覧表になり、CSVでダウンロードできる。ネットを切っても動く。


完成した順に公開していく。最初の読者は冒頭の彼女なので、彼女が詰まったところが、次に直すところになる。ベトナムで経理をしている人、ベトナム人スタッフに勧めたい人がいたら、使ってみてほしい。