数年前までハノイ郊外に住んでいる私はGrabの圏外だった。また、妻の実家へ行ったり帰ってくるためには、車を持っている親戚や知り合い、昔空港タクシーを頼んだりGrabで連絡先を交換した運転手に値段を交渉して頼む必要があった。

今はXanh SMがあるので、地方へも行ってくれるし、ド田舎の妻の実家から帰るときもすぐに運転手は見つかる。

しかし疑問がある。田舎でタクシーをやってお客はいるのか?車はXanh SMのペイントだが、どうみても運転手の個人の所有物としか思えない場合がある。運転手もGPSとか地図アプリの使い方がわからないようで、近くにいるのに予約してから道に迷った末30分くらいかけて迎えに来たとかある。また、40代50代のおじさんで、明らかにさっきまで自宅で酒を飲んでいただろうという人もいた。

車が個人の所有なら、この人たちはどうやって車を手に入れたのか?VinFast及びXanh SMのビジネスモデルはどうなっているのかDeep Researchしてみた。


※この記事は、現地での実体験と公開情報を元にAIを用いてビジネスモデルを分析したものです。間違っていたらご勘弁を。

1. 「社員」か「個人事業主」か。ナンバープレートの色ではわからない違い

まずAIによる調査で判明したのは、私たちが街で見かける水色のタクシーには、明確に2つの異なる属性が存在するということです。

  1. 直営従業員(Traditional Employee Model)

    • 会社(GSM社)が車を所有。

    • ドライバーは固定給+ボーナスをもらう「社員」。

    • ハノイやホーチミンなどの都市部が中心。研修もしっかり受けている。

  2. プラットフォームパートナー(Platform Partner Model)

    • ドライバー個人が車を購入・所有している。

    • 基本は個人事業主。売上の大部分をもらえるが、経費も自分持ち。

    • 地方・農村部に多い。

私が田舎で遭遇した「道に迷うおじさん」や「自宅感満載のドライバー」は、十中八九、後者の**「プラットフォームパートナー」**です。彼らは社員ではないため、ガチガチの管理下にはなく、自分の車で商売をしている「個人タクシー」のような存在なのです。

しかし、ここで最大の謎が残ります。 「農村部のおじさんが、どうやって数百万円もするEV(電気自動車)を購入できたのか?」


2. 驚異の金融スキーム「0ドン購入プログラム」

ここが今回のDeep Researchで最も唸らされた部分です。VinFastとGSMは、金融工学を駆使して**「貯金ゼロでも参入できる仕組み」**を作り上げていました。

その名も、「Mua Xe VinFast Với 0 Đồng(0ドンでVinFast車を購入)」

通常、車をローンで買うには20〜30%の頭金が必要です。しかし、このプログラムは頭金なし(LTV 100%)。さらに、以下のような特徴があります。

  • 初期投資ゼロ: 手元に現金がなくても車が手に入る。

  • 5年間の固定払い: 毎月決まった額を返済していく「固定年金方式」のようなローン。

  • 免許取得サポート: 免許がない人には、教習費用の前借り制度まである(VinDT連携)。

つまり、農村部で「土地はあるけど現金収入が少ない」「仕事がない」という中高年層に対し、**「元手なしで、今日から社長になれますよ」**という強力なオファーを提示しているのです。これにより、急速に地方までXanh SMの網が広がったわけです。

3. ドライバーの懐事情を勝手にシミュレーションしてみた

では、彼らは儲かっているのでしょうか? AIに計算させてみたところ、なかなかヒリヒリするような「損益分岐点」が見えてきました。

例えば、VF 5という車種を「0ドン」で購入した場合、ドライバーは毎月1日の時点で、以下の固定費という「借金」を背負ってスタートします。

  • 車両ローン返済: 約990万ドン

  • バッテリーサブスク: 約180万〜290万ドン

  • その他維持費: 数十万ドン

  • 合計: 月額 約1,270万ドン(約7〜8万円)の赤字スタート

ベトナムの工員さんの月給が700万〜1000万ドン程度であることを考えると、この固定費は強烈です。彼らは生活費を稼ぐ前に、まずこの1,270万ドンを稼ぎ出さなければなりません。

さらに、ここには**「黄金の手錠」とも呼べる仕組みがあります。 GSM社は月額70万ドンほどのサポートを出してくれるのですが、その条件は「Xanh SMのアプリで独占的に稼働すること」**。もし「Grabも掛け持ちしようかな」と浮気すれば、サポートは打ち切られ、支払いはさらに厳しくなります。

4. 「2027年の崖」という時限爆弾

現在、このモデルが成立している大きな要因の一つに、**「V-Green充電ステーションでの充電無料(2027年6月まで)」**というキャンペーンがあります。

電気代という最大の変動費が、今はタダなのです。だからこそ、多少効率が悪くても、走れば走るほど売上になり、ローンの支払いが可能です。

しかし、2027年7月以降、充電が有料化された時が本当の勝負でしょう。 フル充電にかかるコストがドライバーの自己負担になったとき、5年ローン(2029〜30年まで続く)の返済と両立できるのか。

まとめ:便利さの裏にある「エコシステム」

今回調べてみて、VinFast/GSMのビジネスモデルは、単に車を売るだけでなく、**「車両在庫を金融商品化し、労働力とセットにして市場に送り出す」**という、非常に高度な戦略だと感じました。

  • ユーザー(私): 田舎でもアプリ一つで車が来て便利。

  • メーカー: 車が売れる(市場に出る)し、プラットフォームも拡大する。

  • ドライバー(おじさん): 元手なしで商売を始められるチャンスを得る。また、車を所有できる。(ただし、巨大なリスクとセットで)。

私が田舎で出会う、ちょっと頼りないけれど愛想の良いおじさんドライバーたち。彼らは単なる運転手ではなく、**「VinFastのエコシステムを背負った個人投資家」**だったのです。