はじめに:先人たちの知恵に感謝を込めて、2025年の「今」を共有する

「ベトナムで運転免許を書き換えるなら、あのブログに書いてあったな…」

「以前、お世話になった交通運輸局の場所は…」

ベトナムで生活する私たちにとって、これまで多くの方々が共有してくださった経験や情報は、暗闇を照らす灯台のような、かけがえのない道しるべでした。その貴重な知恵の蓄積があったからこそ、私たちは多くの困難を乗り越えることができました。

その上で、2025年、ベトナムの運転免許制度に大きな転換期が訪れました。この変化は、私たちが依拠してきた前提を大きく変えるものです。本記事の目的は、先人たちが築き上げてくださった情報という礎の上に、「2025年からの最新情報」という新しいレンガを積み重ね、知識を共有・更新していくことです。

私自身、この制度変更の渦中で免許の更新・書き換えを経験し、多くを学びました。この記事が、これから手続きをされる方々、そして変化に戸惑う皆さんの新たな一助となることを願って、私の経験をまとめます。

【重要なお断り】この情報もすぐに古くなる可能性があります。また、担当者や地域によって対応が異なるのがベトナムです。この記事も一つの参考として、最終的にはご自身で、時には書類を突き返されながらも、粘り強く手続きを進めていただくことをお勧めします。


第1章:これまでの情報と何が変わったのか?2025年からの新制度を理解する

2024年までの体験記で紹介されていた手続きと、現在のプロセスは、主に2つの点で大きく異なります。この「違い」を理解することが、スムーズな申請への第一歩です。

1-1. 管轄の移管:交通運輸局から「公安警察」へ

これまで長年にわたり、私たちの免許手続きを担ってくれたのは、「交通運輸局(Sở Giao thông Vận tải)」でした。しかし2025年3月1日より、その全ての業務は「公安省 交通警察部(Cục Cảnh sát giao thông, Bộ Công an)」、つまり警察組織に完全移管されました。これにより、手続きの厳格さ、書類の法的整合性が、これまで以上に求められるようになっています。

1-2. 根拠法の刷新:ルールの明確化と厳格化

管轄移管に伴い、根拠となる法律も新「道路交通秩序安全法」や公安省発行の通達(例:Thông tư 12/2025/TT-BCA)に刷新されました。これにより、以前は慣例的に処理されていた部分も、厳密なルールに基づいて運用されるようになりました。


第2章:【新規書き換え編】日本の免許からベトナム免許へ - 最新・全ステップガイド

2-1. あなたは対象者?申請前の必須条件チェック

  • 有効な日本の運転免許証を持っていること。

    • 【超重要】AT限定免許は書き換えできません。ベトナムの免許制度に「AT限定」の区分がないため、対象外となります。

  • 3ヶ月以上の有効期間が残っている一時滞在許可証(TRC)を持っていること。短期の観光ビザでは申請できません。

2-2. 書類準備:このリストがあなたの生命線

ここが全行程で最も重要です。私の経験も踏まえて、最新の必要書類リストを作成しました。

  • ① 運転免許書き換え申請書

    • 窓口で入手可能ですが、事前に公安省のサイトからダウンロードもできます。ただし、地域によって様式が微妙に違う可能性もあるため、ダウンロードしたものは「下書き」として持参し、窓口で清書するのが確実です。私はHung Yenだったので、英語での記載がなく、AIで翻訳したり聞いたりして記入しました。

  • ② 日本の運転免許証とそのベトナム語翻訳・公証

    • 翻訳はベトナム語が必須です(英語は不可)。そして、その翻訳文が正しいことを証明する「公証(Công chứng)」を公証役場で取得します。

  • ③ パスポートの顔写真ページのコピー

    • 多くの情報では「公証が必要」とされていますが、私の場合は公証なしで受理されました。ただし、これは担当者による可能性があります。念のため公証を取っておくのが最も安全策です。

  • ④ TRC(一時滞在許可証)のコピー

    • パスポート同様、私は公証なしでOKでしたが、これも担当者次第かもしれません。

  • ⑤【NEW】健康診断書

    • 現在、四輪免許の書き換えには必須です。しかし、この「指定病院」探しは謎に包まれています。ある人は警察からリストを渡され、ある人はベトナム人のスタッフに探してもらったと言います。ちなみに私は、Vinmecで500万ドン(約3万円)と言われ驚愕し、近所のローカル病院で35万ドン(約2,100円)で受けました。内容は視力、血圧、尿検査など簡単なもので、血液検査やレントゲンはありませんでした。

  • ⑥【盲点】住民登録の証明書

    • これはどの情報サイトにも載っていませんでしたが、ハノイでもフンイエンでも求められました。おそらく現在、必須の書類です。TRCとは別に、あなたがどこに住んでいるかを証明する書類(Giấy xác nhận thông tin về cư trúなど)の準備が必要です。

  • ⑦ 各種原本

    • 上記②〜④の原本(日本の免許証、パスポート、TRC)は必ず持参してください。窓口でコピーと照合されます。

2-3. 申請当日のリアル:理想と現実

多くの情報サイトでは、申請当日の流れは「番号札を取って待つ」というスマートなものとして描かれています。しかし、私の体験は全く異なりました。

私の体験談

ハノイのハドンにある警察署へ行くと、そこには整理券発行機などありません。敷地内の小さな小屋のような場所に2人の警察官がいて、その周りを大勢の申請者が団子のように取り囲んでいるだけ。誰に話しかければいいのかも分からず、そこにいる誰かに声をかけるしかありません。

私はフンイエン省在住ですが、過去2回はハノイで書き換えをしていたため、何の疑いもなくハノイへ向かいました。在ベトナム日本国大使館のページにもハノイの住所が記載されていましたし…。

最初のトライでは、3つのことを指摘され書類を突き返されました。一度でうまくいくと思っていなかったので想定どおり。

  1. 翻訳公証のサイン:「日本の免許証の翻訳ページに翻訳者と公証人のサインがない」。公証人は「Testimonyページにあれば十分なはずだ」と言っていましたが、担当者が言うことは絶対。これがベトナムです。

  2. 住民登録証:どの情報にもなかった「住民登録証」を求められました。

  3. 健康診断:あれだけ苦労してとった健康診断も「いらん」と言われました。(その後手続きしたHung Yenでは健康診断は必要でした。)

10km離れた公証役場へ戻り、「翻訳ページにサインはいらんはずなのに」と文句を言う公証人から何とかサインをもらい、住民登録証は数日かかるので、TRC申請時にPDF化したものを印刷したもので勘弁してもらおうと、急いで警察署へ。時刻はすでに16:30。口論している警察官と市民の隙を狙って再トライすると、今度は私のTRCの住所を見て一言。

「フンイエンの警察へ行け!」

私のハノイでの一日は徒労に終わっただけでなく、期限内で免許証を書き換えられないことが決定しました。


【参考】ベトナム運転免許 申請場所(2025年6月現在)

大使館の情報や他の情報を確認するとハノイでは下記が書き換え場所としてでています。ただ、実際には各コミューンの警察やオンラインでもできるようですが、外国人慣れしているのがハドンのところのようです。

  • ハノイ市 交通警察(PC08)の主要窓口

    • 拠点1(ハドン区): Số 2 đường Phùng Hưng, phường Văn Quán, quận Hà Đông, Hà Nội

    • 拠点2(ザラム県): Số 253 đường Nguyễn Đức Thuận, thị trấn Trâu Quỳ, huyện Gia Lâm, Hà Nội

  • フンイエン省 交通警察(PC08)の窓口:私が行ったところ

    • PC08本部: Số 45 Hải Thượng Lãn Ông, phường Hiến Nam, TP Hưng Yên


第3章:【深掘り解説】免許証が届かない?全国的な「ブランクカード不足」問題の真相

「申請は受理されたのに、カードの在庫がないので免許証の発行は2ヶ月後と言われた…」

「仮免許証もない?」

これは、私の状況なのですが、今まさにベトナム全土で発生している深刻な問題です。私自身、フンイエン省の警察で「カードの在庫がないから、発行は2ヶ月後。仮免許も出せない」と告げられ、まさに途方に暮れています。

更新に行く前に、「政府が運輸局に対してカードの在庫と今後の予測を警察と共有するように指示した」というニュースを読んでいたので、「引き継ぎちゃんとやらんかったんだな…」と最初は思いました。しかし、調べてみると根はもっと深いようです。

ベトナムの各種報道を統合すると、原因は主に4つ挙げられます。

  1. 前例のない需要急増:VNeID(国民電子IDアプリ)への免許情報統合のため、古い紙のバイク免許を新しいICチップ付きPETカードへ切り替える国民が殺到。

  2. サプライチェーンの脆弱性:偽造防止機能付きの免許証ブランクカード(phôi thẻ)は海外からの輸入品で、中央の供給元がこの需要爆発に対応できていません。

  3. 印刷資材の入札遅延:カード自体だけでなく、印刷に必要な特殊なインクやリボンの調達も、各省の入札が遅れるなどして滞っています。

  4. 管轄移管に伴う混乱:この供給危機と同時期に、免許発行業務が公安警察へ移管。システムの引き継ぎや人員配置の混乱が、問題解決をさらに遅らせる一因となりました。

現在の省庁再編や自治体の統合などで、このような問題が山のように出てくるのだと痛感する機会でした。

3-2. 「仮免許なし」の現実とデジタル代替策

この問題の最も厄介な点は、発行遅延中に運転資格を証明する「紙の仮免許」が発行されないことです。仮免を発行している自治体もあるようですが、Hung Yen省ではないと言われました。公安警察は、以下の「デジタル代替策」を提示しています。

  • VNeIDアプリの電子免許情報

  • 交通警察(CSGT)の公式照会サイト:https://gplx.csgt.bocongan.gov.vn

しかし、VNeIDへのデータ反映が遅れたり、そもそも外国人はVNeIDへの登録が2025年7月からようやく登録可能になるという情報もあり、我々外国人にとっては実質的に機能していないのが現状です。


第4章:【失効・更新編】天国と地獄 - 期限を1日でも過ぎた場合の悲劇

この章は、特に注意して読んでください。ベトナム免許の有効期限管理は、日本以上にシビアです。私は幸いにもこの地獄に堕ちずに済みましたが、地域や担当者によっては十分に起こり得ることです。

4-1. 【天国】有効期限内に更新する

期限が切れる前に更新手続きを行えば、比較的簡単な書類手続きだけで新しい免許証が交付されます(ただし、前述のカード不足による遅延はあります)。

しかし、我々外国人には大きな罠があります。

多くの外国人の場合、免許証の有効期限とTRCの有効期限は同じ日に設定されます。そして、新しいTRCが交付されるタイミングは自治体にもよりますが、私の場合は期限が切れる前日でした。つまり、新しいTRCを手に入れた翌日1日しか、更新手続きのチャンスがないという、綱渡りのような状況に追い込まれるのです

【地獄】1日の遅れが命取りに:失効後の再取得プロセス

ベトナム免許の有効期限をたった1日でも過ぎてしまうと、「更新」は不可能となり、「再取得」という全く別の手続きに進まなければなりません。2025年施行の公安省通達(Thông tư 12/2025/TT-BCA)により、失効後1年未満の場合は、筆記試験(thi lý thuyết)の再受験が義務付けられました。

4-3. 「日本の免許が有効だから…」は通用しない?

「ベトナム免許は失効したけど、元の日本の免許はまだ有効だから、また新規書き換えをすればいいのでは?」と考えるのは自然です。しかし、私もこのロジックが通用しない恐怖を肌で感じました。データベースには「ベトナム免許の失効者」として記録が残り、その処理が優先されるのです。

4-4. 450万ドンの誘惑:違法な賄賂

追い詰められた状況で、「450万ドン(約27,000円)払えば、試験なしで免許を出してあげるよ」という救いの手が差し伸べられるかもしれません。

これは絶対に利用してはいけません。100%違法な賄賂(hối lộ)です。発覚した場合、免許取消はもちろん、高額な罰金や刑事罰の対象となる極めて大きなリスクがあります。


第5章:【筆記試験編】ベトナム語ゼロでも大丈夫!…なのか?

万が一、筆記試験を受けることになっても、道はあるようです。

5-1. 朗報:試験は英語で受験可能!

ベトナムの運転免許筆記試験は、会場のPCで言語を英語に切り替えることができます。

5-2. 最大の壁:英語の公式学習教材がない問題

しかし、ここで大きな壁にぶつかります。英語で学習できる公式アプリやWebサイトが、現在ほとんど利用できないのです。ベトナム語の勉強教材はPDFやアプリなど豊富にありますが、外国人には厳しい状況です。

5-3. 解決策はあるのか?

正直なところ、自力での簡単な解決策はないのかもしれません。

AIに相談したところ、私が耳にした「450万ドン」という金額が闇ルートの相場と一致すると分析されたことで、私は腹を括って「(もし必要なら)試験を受けよう」と決意しました。幸い、最終的には試験を受けずに済みましたが、もし受けることになっていたら、AIにベトナム語のPDF教材を読み込ませ、英語の練習問題やテキストを作ってもらっていたと思います。


おわりに

2025年の制度変更で、日本の免許からの書き換えは、以前より格段にハードルが上がった、というのが私の率直な感想です。特に、ベトナム語が流暢でない外国人が自力で全てをこなすのは、非常に困難だと感じました。

配偶者がベトナム人の方ならその助けを、そうでなければ会社のスタッフやベトナム人の友人など、信頼できるベトナム人のサポートが不可欠だと痛感しています。そうでなければ、申請場所はおろか、指定病院一つ見つけることすら、途方もない労力になっていたでしょう。

この記事が、同じようにベトナムで奮闘する皆さんの助けとなり、少しでもその苦労を和らげることができれば、これに勝る喜びはありません。