昨日、ハノイのF1が開催されるはずだった場所の近くを通った。
ちょうどNetflixでセナとシューマッハの番組を続けて見たばかりだった。それで、ミーディンのあたりを走りながら「ここでF1が走るところ、見たかったな」と思った。
2020年4月5日、ここでベトナムGPが開催される予定だった。ミーディン国立競技場のまわりの公道を封鎖した5.607km・23コーナーの市街地コース。設営はほぼ終わり、観客席も建っていた。そこへコロナが来て中止になり、翌年は主催側の汚職事件で開催権ごと消えた。このコースは、一度も本番を走られないまま無くなった。
その晩、寝られなくなった。それで、Claudeに作ってもらうことにした。
最初はひどかった
「ドライバー視点でコースを走る映像を作れる?」と頼んで、最初に出てきたのがこれだった。
道の形は公式のコース図どおりなので合っている。でも、これではどこの国か分からない。建物はただの箱で、木は緑の塊。ハノイに住んでいる人間が見て「あの道だ」と言えるものではなかった。
そこから、気になったところを片っ端から言っていった。「木がしょぼい」「ランドマーク以外は在住者でもどの道か分からない」「建物の表面には画像が貼ってあるが、横に貼っていないので見た目が変わらない」「青い空にしてほしい」。
写真を貼ったら急に街になった
大きく変わったのは、手描きのテクスチャをやめて写真素材を貼ったときだった。AIで生成した実写テクスチャを17枚作って、建物と路面と木に貼っていく。
貼ったのは、間口の狭いチューブハウス(黄土色の外壁、雨だれの黒い筋、鉄柵のバルコニー、屋上の青い貯水タンク、1階の赤い「PHỞ」看板)、ベランダを後付けの鉄格子で覆った集合住宅、街路樹の xà cừ・ダイオウヤシ・朱赤の花をつけた phượng vĩ、アスファルト、歩道の敷石。
それでもまだ足りなかった。建物の側面が手描きのままだったのだ。ベトナムの家は隣家と壁を接して建つから、側面は窓が少なく、雨だれとカビの縦筋とPVC配管だらけになる。そこを写真にして、空を昼の青空に変えたのが今の状態。
「知っている道」に見せるためにやったこと
結局いちばん効いたのは、写真そのものより通りの名前を出したことだった。走行中、画面の左に現在地の通り名が出る。レ・ドゥク・ト → チャウ・ヴァン・リエム → レ・クアン・ダオ → タンロン大通り → メ・チ → ファム・フン。実際にコースが使う予定だった道の順番どおりに切り替わる。3D空間の中にも、ハノイの青い街路標識を立てた。
ランドマークも車窓に流れる位置に置いた。ミーディン国立競技場の三日月屋根、国家会議センターの波型屋根、ファム・フンの環状3号線の高架、正面にそびえるランドマーク72。電線だらけの電柱と赤い横断幕もある。
コースそのものは公式の図面に合わせてある。全長5.607km、23コーナー、反時計回り。ティルケ設計で、1コーナーはニュルブルクリンク、中盤のエスは鈴鹿、高速スイーパーはセパンが下敷きだと公表されていた。名物はレ・クアン・ダオ沿いの1.5kmストレートで、ここはF1カレンダー最長になるはずだった。再現でも335km/hまで伸びる。1周は82秒。
途中で見つかった3つのバグ
作っている最中、Claudeが自分で見つけて直したものが3つあった。どれも面白かったので残しておく。
コースが自分自身と交差していた。ターン1の進入路と最終スイーパーが14mしか離れておらず、2本の道路が物理的に重なっていた。図面を目分量で置き換えたせいで、実物では別の場所を通る2本が、こちらでは同じ場所を通っていた。「道が変」の正体はこれだった。
木の輪郭が白く光っていた。白背景の写真から木を切り抜くと、透明にした部分に白が残る。遠くの木は縮小して表示されるとき周囲と平均されるので、その白が滲み出して全部の木が白く縁取られる。透明部分の下に葉の色を塗り広げてから切り抜いたら消えた(上の2枚目の画像に、まだこの白フチが残っている)。
看板の文字が片側だけ鏡文字だった。コースの両側のバリアに同じ「VIETNAM GRAND PRIX」を貼ると、片側は裏から見る形になるので反転する。1枚目の画像の右側をよく見ると、たしかに裏返っている。
まだ満足していない
ここまで来たが、まだ「あの道だ」と言い切れるところまでは行っていない。建物の位置は近似だし、細かい看板や店の並びは実物とは違う。
次はGoogle Mapの画像を使って生成できないか試したい。実際のストリートビューがあるのだから、それを素材にできれば、近似ではなく本物の並びになるはずだ。トークンに余裕のあるときにやってみる。
ハノイに住んでいる方は、通り名の切り替わりを見ながら走ってみてほしい。合っているか、違っているか、教えてもらえるとうれしい。
※実写ではなく、公開されているコース図をもとに作った再現CGです。建物の位置・大きさは近似で、実際の街並みと1対1では対応していません。ブラウザでWebGLが動く環境が必要です(スマートフォンでも動きますが、パソコンの方が快適です)。
(追記)この「Google Mapを試したい」の顛末を続編に書いた → 「AIの街が嘘くさい」の犯人は、地図だった



